空中戦に狙撃を添えて

「あぁぁぁぁ!!」


 離陸して直後、私は思いっきり操縦桿を下に動かし、9Gを超える負荷を生身で受けます。


「いぃ……!」


 肋骨がぁ!とても痛いですねぇ!


「ARCに置いてあった……はずの戦闘機なんですから、もうちょっと役に立ってくださいよぉ!」


 垂直に近い角度で上昇しているからか、戦闘機の速度であっという間に雲が近づいてきました。

 戦闘機はそのまま上昇を続け、何事もなく雲を突破します。


「よっ……」


 私はひとまず操縦桿を戻し、横目で戦闘機の装備を確認します。


「ええと、あるのはチャフとフレア……チャフとフレア!?他には何も無しですか!?」


 唯一残っているチャフとフレア自体も、どうやら量は少ないみたいですね。となると戦闘機を使われることを予見してARCの人がミサイルや機関銃の弾薬を抜いていたのか。

 折角無理くり持ってきたのに、これじゃあ少しきついですかね〜……。


「むっ、レーダーに……十六機!?ちょっと多すぎ――」

「ドドドドドド!!」

「なぁ〜!!」


 戦闘機の右側に、機関銃の弾丸と銃声が聞こえてきます。運良く右翼には被弾してないですね!

 さて……ここから飛行機に辿り着くまでに持つかどうか……実力試しの時間ですね!


「ふっ!」


 私は一先ず遠くの戦闘機を見るために、操縦桿を思いっきり上に上げ、ロールをして飛行機を後方に向け、ロールの頂点で機体を180°変えて向きを戻します。


「天皇陛下ばんざ〜い!!」


 私は何を土地狂とちくるったのか敵戦闘機がいる方へと突っ込みます。まあ突っ込んだ所で迎撃のできる武器は無いのですが……ここで堕とさなければ後々キツそうですし……武器が無ければ作ればいいですよね!


「無理くりオートモード!そしてぇ……!」


 私は操縦桿にAI機器を搭載した近未来の自動操縦マシーンを能力で生み出して付け、自分の頭上にある窓ガラスを盛大にぶち破ります。


「ステンバ……っ頑丈とはいえ意外と肺が死にそうですねっ……」


 私は酸欠で倒れる前にRPGの弾薬だけを能力で生み出します。


「イグラ……いいえ、ロケットランチャーが無くても戦闘機程度墜としてみせますっ!」


 私は上半身を思いっきり捻って振りかぶり、弾薬を持っていない手で狙いをつけます。とはいっても約一キロメートルの敵に狙いをつけろなんて無理な話なので、能力で視力を強化しつつ――


「うおりゃぁぁぁ!!!」


 私の手から離れた弾薬は空気の壁を突き破り、音速を超えた速度で戦闘機目掛けて飛んでいきます。

 しかしながら、戦闘機には躱されてしまいました。


「そこ普通当たるシーンですよね!?どんだけ動体視力良いんですか!?」


 戦闘機の行動にケチをつけながら、私はこちらに飛んでくるミサイルを見かけます。恐らく赤外線誘導ですね。


「WARNING,WARNING……」

「フレアフレアっ……」


 聞き慣れた警告音を聞き流し、上げた視力を矯正するために能力で眼鏡を生み出し、それをかけながら私はフレア散布のスイッチを操作します。


「タッタッタッタッ……」


 飛行機は焚いたフレアから軌道を変えつつ進んでいき、フレアに突っ込んでいくミサイルを躱します。


「よし……」


 次に私は持ってきたレイを持ってチャージを始めます。


「WARNING,WARNING……」

「っ、面倒くさいですねっ」


 都度都度、機関銃やらミサイルやらの攻撃が来ますが、片手でそれらに対処しつつレイのチャージを終えます。


「レールガンなら躱せませんよ、ねっ」


 敵の弾幕を切り抜けながら私の戦闘機は進んでいき、狙撃がしやすいポジションへとつきます。


「流石に……堕ちろ」

「パァァン!!」


 私は即座に発砲し、乾いた音が響くと同時に、弾薬庫に命中し爆ぜる戦闘機を一機確認します。


「偏差撃ち、キツかったけど取り敢えずワンスプラッシュですね」


 戦闘機のコックピットに身を隠しながら私はそう呟きます。

 残るは十五機……行けますかねこれ。

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