脱出に経路を添えて
さてと、勢いで言ったはいいものの、正直バカでかいこの研究所を二十分で脱出するのって厳しいんですよねぇ。
【飛行機はハイジャックするかい?】
「どうでしょう。飛行機はどのルートを通ってます?」
【おおよそ、ハワイ諸島の少し上かな。今回はバンクーバーへの直行便みたいだ】
「とってもいいルートですねっ……あ、戦闘なので切ります」
微かに足音が聞こえたのででトランシーバーをポケットに……と思ったのですが、いつの間にか服が女性用の患者衣になってますね!?気づきませんでしたぁ!?
これじゃ蹴り技とか使え……いや使わないので大丈夫ですかね。
「いたぞ!」
脱走者って言葉、久しぶりに聞きましたね〜。あの時の楽しくて苦しい思い出が蘇ってきます!
「パンッ!!」
私は中腰の態勢になって眼前に銃を構え、顔を出した人の眉間を撃ち抜きます。
「やっぱりこれでしょうか」
今回はたまたま当たりましたが、やっぱりハンドガンは使いにくいですね!
「いでよ『レイ』ちゃん!」
私は能力を発動させ、最近準レギュラー化しつつあるレールガンのようなものを目からサッと取り出します。
「ドドドドドドッ!!」
相手側からの銃火器の応戦を軽く耐えつつ、ゆっくりとレイのエネルギーの充填をしていきます。
「バァン☆」
「パンッッ!!!!」
私はレイのエネルギーが溜まった瞬間に撃ち、相手が隠れていた壁ごとごっそり消し飛ばします。
いやぁ、お掃除ってスッキリしますね!
「さてと、このまま行きましょうか」
私はこの研究所の出口へ目掛けてまっすぐ進みます。道中ではかなりの数の敵に出くわしたり、挟み撃ちにあったりしましたが、その度々にレイの弾丸をぶっ放し、ご飯を食べ、切り抜けていきました。
音を気にしなくていい分、手軽に超火力が出せていいですね!
「ふう、早くも出口付近……」
今は……体感で15分ぐらいでしょうか。いやぁ、レイの火力様々ですねぇ〜。やっぱり弾幕はパワーですね!
とは言いましても、この先に嫌〜な二つ三つほどあるんですよね。今は曲がり角でじっと待機しているんですが、いやはやどうしたものでしょうか……。
「やっほ〜☆」
っ!?せんぱ、いやちがっ――
「パワードアーム・フェーズ3、起動」
「ドンッ!!」
肋骨に嫌な軋みが聞こえたと同時に、壁を大きく突き破って私は吹き飛びます。
せめて地面には叩きつけられまいと、私は義手と義足を使って無理くりに着地をしました。
「打てぇ!!」
吹き飛ばされた先は兵士が多く待機した大広間。兵士の一部はARCお手製のヤバそうな銃を持っていますね……。ならばっ!
「とうっ!」
「っ!?上だ!上に打て!」
弾幕を回避した今のうちに、私はレイを逆向きで持ってチャージしつつ、能力で紐を生成してレイに括り付けます。
そして私は紐の先っぽを掴み、引き金を握りながらレイを投げる態勢に入りました。
「反動足りてください、よっ!」
弾幕がこちらに来る寸前という所で、私はレイを思いっきり前方にぶん投げます。
レイの反動は私の身体を思いっきり引っ張り上げ、一気に私を日の元まで引っ張り出してくれました。
「わぶっ!?」
……のですが、太陽の光の眩しさにやられて不安定な態勢のまま顔面と地面がごっつんこします。
「あだぁ……いやいや、そんなこと言ってられる場合じゃないです、ねっ」
私は起き上がり、取り敢えず追跡を回避するために走り始めます。
ふむ……。ARCの本拠地は洋上の研究施設なのは変わらないみたいですが、以前よりも敷地が広くなっているみたいですね。
具体的には今いる区画から少なくとも二方向に橋が伸びてて、また別の区画に続いているみたいですねぇ。これはかなり移動が面倒くさそ――
「……ドドドドドドッ!!」
うえっ!?まだ少ししか経ってないのにもう追いついて来たんですか!?……追いつかれるものですかぁ!ふぬぅ!!
「……あっ!?」
全力疾走でふと上を向いた瞬間、上空には空を飛ぶ飛行機が見えました。
「えっと、戦闘機は恐らく……いやもう面倒くさいですねっ!」
向かうは区画同士を繋げてる橋!なんか丁度良さそうな滑走路してますね!
「持ってくださいよ私の身体ぁ!」
私は能力を全開で発動し、軍用戦闘機を取り出します。どうやらこれといって私に変化は無いみたいですね!
もはや目から取り出せないようなサイズですし、大分無茶苦茶な未来を引きずり出した気がしますが、それでも何とかなったみたいで良かったです!
「とうっ!」
私は飛び上がって戦闘機のコックピットに乗り込みます。
「あ〜……はいはい。操作盤は結構使いやすくなっていると……時代を感じますねぇ」
私は慣れた手つきで操作盤を動かし、戦闘機のエンジンを起動し、さっさと離陸に向けて発進します。
「ヘルメットとかは……まあ私は頑丈なので何とかなりますかね」
色々と準備は足りていない気がしますが、そんな物を用意する暇は無いので、このまま離陸しましょうか。
「キィィ……!」
いや、せめて耳栓は用意した方が良かったかもしれないですね――
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