少女に紫のスカビオサを添えて 後編
今回はグロ注意ですっ!
――――――――――――――――――――
「髪飾り……ない」
秋半ばの日の出の時間。寝袋からムクッと起き上がった私は、いつの間にか髪飾りが頭から外れている事に気が付きました。髪飾りを見つけるため、神社をくまなく探しますが何処にも見つかりません。
おかしいですねぇ……?
「まあ貰い物ですので大して困りはしませんが……無いなら無いで落ち着きませんねぇ」
取り敢えず下山して髪飾りを買いに――
「ドォォォン!!」
そう思った矢先、唐突に爆発音がします。
びっくりしましたけど、どうやらただの地雷の爆発音みたいですね!
「ドォォォン!!ドォォォン!!」
……でも今回は爆発音が心なしか多いような気がしますね。それに段々こちらへ爆発音が近づいてくるような――
「ドドドドドドッ!!」
すると、突然神社へと無数の銃弾が放たれます。
幸い銃弾は私をかすりもしませんでしたが、神社には大量の穴が空いていました。あっぶないですねぇ!?
「――ターゲットを捕捉しました」
神社の入口からどこか無機質な声がしたので振り返ると、破れた襖の先からアサルトライフルを持った少女がこちらに銃口を向けていました。
「ちょっとま――「ドドドドドドッ!!」っ!?」
再び放たれる銃弾を間一髪で避けながら、私は寝袋の近くにあったM107CQを手に取り、弾薬の装填を素早く済ませます。
「何だかんだで銃撃戦は久々ですね……片腕が鈍ってないと良いです、がっ!」
私は襖を思いっきり突き破り、そのままの勢いで引き金を引きます。
「ガンッ!!」
銃弾は発射され、真っ直ぐ少女の元へと向かいますが、少女はそれを手で防ぎ、跳弾が私の顔を掠めます。
「ははっ……」
私は少女の姿を見ると、思わず笑いが込み上げてきました。
その少女は、まるで私と瓜二つな外見をしているのですから。とは言いましても、髪は紫に染まり、髪飾りはマリーゴールドの髪飾りに変わっているようですね。
「攻撃再開」
「っ!?」
パワードアームを装着していた彼女から、鉄を穿つ威力の拳が放たれます。
「ぐぅ……」
間一髪で避けてはいますが、次々に繰り出される拳に防戦一方。最近の戦闘、私の余裕なさすぎではありませんか……?
まあ距離を無理くり詰めてこんな状況にしたのは私ですが。せめて義手を作っておけば良かったですかねぇ……!
「っ!」
「バァァン!!」
相手が隙を見せた瞬間を狙い、私は引き金を引きます。
「ふっ」
「ブンッ!」
弾丸は避けられ、一瞬でカウンターが飛んできますが、私はしゃがんで避けます。
「うがぁぁぁ!」
「ぐっ!?」
しゃがんで避けた隙を埋めるため、私は少女のみぞおちに向かって思いっきり頭突きを仕掛けます。
予想外の行動だったのか、少女はもろに頭突きを喰らい、そのまま少女が倒れ込みました。
私はその隙にボルトを引き、対物ライフルの弾を装填して、少女の腕に突きつけます。
「ドドドドド「バァァン!!」ッ……」
少女は私の脇腹に銃弾を撃ち込みます。ものすごい痛いですけど……私はそれを防ぐために対物ライフルの引き金を引きます。
流石に至近距離では防ぎきれないようで、パワードアームの装甲ごと、腕に穴が空いていました。
「逃げられませんからね……」
流石に決着ですかねぇ。いやぁ、一時はどうなる事かと思いましたけど……。
「パワードアーム・フルバースト、起動」
へっ?ふるばー、すと?
「キィィ……ッ!!」
ちょっと待ってくださいそれはもはや発動後の発熱で自分を傷つけるヤケクソ自傷高火力技じゃないです――
「グチャッ!」
「っ!?」
少女の腕が揺らいだと思った時には、既にその腕は音速を超えて特に痛みも無く私の腹を貫いていました。
「……ぁ゙、あ゙っ゙!?」
貫いた瞬間は特に痛みもなくただぼんやりと腹が
「あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ゙!!ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙!!!」
私は全身を突き刺すような痛みに耐えきれず、少女の腕から無理くり離れようとしますが……。
「ドロッ……」
パワードアームは少女の腕を溶かし、私に引っ付きます。私は思わず尻もちをつきますが、痛みに悶えてそのまま地面をのたうち回り、声にならない悲鳴を上げていました。
「……対象の無力化を確認。ミッション終了です、マスター」
すると片腕が溶け、もう片腕も使い物にならなくなっていた少女が起き上がり、どこかを見つめていました。
私は何があるのかと、痛みで溢れ出す涙で堪えながら少女の視線の先を見つめます。
「パチ、パチ、パチ、パチ……」
「やはり哀紫花は素晴らしいね……どうやら仕留め損なった紫陽花とは大違いみたい」
そこには、髪型や服装こそ違えど、見覚えのある顔や、少しトーンが下がったけれど似ている声、そして嗅ぎ覚えのある香水の香りが漂う、トートバッグを持った女性がいました。
「ぁ゙っ゙……」
「その顔、何かに気づいたって感じの顔だね。多分合ってるだろうから、答えはわざわざ言う必要はない……よね」
女性は……先輩は私に近寄り、しゃがみ込みます。
「ふむ……能力活性剤は確かに一錠飲ませたはずだけど、どうやら無効化されてるのかな」
女性は私の目を覗き込むと、そう呟きました。
「まあいっか。……さてさて、研究所が大分手間取ったみたいだけど、これでようやく収穫出来るね」
女性は私の目に向けて手を伸ばします。
「あ゙っ゙……や゙っ゙!!」
「っ、この傷でも駄目かぁ。哀紫花……はもう駄目そうだし、これしかないかな」
すると女性は、トートバッグから一つの手榴弾を取り出します。私から少し離れると、手榴弾のピンを引き抜き、こちらへ投げました。
「ドォン!!」
「っ゙っ゙っ゙あ!!」
能力の消失は防ごうと、一重の眼を発動させようとしますが、その考えに至る思考は既に鈍っており、結果として能力は消えてしまいました。
「うんうん。無事に眼の色が濁ったね。それじゃ、貰うね」
女性は改めて私に近づくと、私の両目を抉り、眼球を無理くり引き抜きます。
「あぁ、そうだ。観夢ちゃん」
視界が真っ暗な中、突然あの時の先輩の声色で話しかけられます。
「前に付けてた、紫色の……スカビオサって花の髪飾りだっけ。私、花言葉を調べて見たんだけど、『不幸』とか『私は全てを失ったとか』、何だか怖い意味の花言葉だね。だけど――」
私の意識が消失する寸前、先輩は一拍置いて、この言葉を残しました。
「似合ってたよ」
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