港に予感を添えて
『輸入』という文字を見て、皆さんは何を思いますでしょうか?
最近ですと、お米の輸入でしたり……麻薬や覚醒剤などの密輸の事でしたり……日常生活で見かける海外産のお魚お肉などもそうですね。今挙げた例以外にも色々あると思います。
ともかく輸入というものは色々なイメージがありますよね〜。
なぜ急にこんな話をしているのか……その答えは私の目の前にあります。
「この箱の中身全部……人間、ですか」
【生きているかい?】
「呼吸音は聞こえています」
以前、依頼人さんにチラッと聞かされていた南区の異変。私はその調査をするために、嫌がりつつも起眞港に来ました。
夜の港を頑張って隠れながら探っていき、怪しい所を徹底的に炙り出して、そうして怪しい箱を見つけたまでは良いのですが……。
「どうしましょうか、これ。私としては一重の眼が例のやつを出す前に片付けたいのですが」
【ふむ……それは一旦後回しにしよう。姫、その箱の場所を教えてくれ】
「第三倉庫四区画目にある梯子を登って足場を進んだ先の職員専用エリア、です」
【了解……よし、先に進んでくれ】
「はい」
私は箱の蓋を閉じ、『STAFF ONLY』と書かれた扉を開けて倉庫まで戻ります。倉庫には人の気配は無く、安全に梯子から降りる事が出来ました。
「よし……後は第四倉庫のみでしょう「あれ?観夢ちゃんじゃん?」かひゅっ!?」
私は咄嗟にトランシーバーや拳銃といったバレたら一発アウトな物を服の中に隠し、声のした方向へ振り返ります。
「あれ……この間の先輩じゃないですか?」
振り返ればそこにはこの間の警備バイトでお世話になった先輩がいました。
「そうそう!観夢もここでバイト?」
「えぇ……ちょっ、と夜間警備のバイトですね」
「遅くまで頑張ってるみたいだね〜……あっそうだ。折角だから差し入れ、はいっ☆」
そう言って渡されたのは、透明の包装に包まれた、白い飴でした。
「塩飴。涼しくなってきたとはいえ、塩分も水分も必要だからね。ちゃんと取っておくんだぞ〜それじゃあねっ」
先輩は背中を向き、倉庫の出口へと向かっていきます。私はそれを見送った後、飴をポケットに入れました。
「クリアです」
【ふぅ……今のはヒヤヒヤしたね】
「知り合いが来た時ほど怖いものはないですね」
実際、すごくヒヤヒヤしましたからねぇ……。本当に肝が冷えそうでしたよ。
【……よし、撤退しようか】
「はい?」
依頼人さんが先輩に出会う前に言っていた事と、今言った事が矛盾していて、私は「?」を浮かべます。
【今日はもう探索しすぎたみたいだからね】
「そ、そうですか」
【うん。あ、ついでにさっき貰った塩飴、喫茶店で渡してくれるかい】
「りょ、了解です?」
何か今日は依頼人さん変ですねぇ……?まあ今日は夜遅いですし、早めに帰って寝ましょうかね!
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