コラボ回2☆ 私に見知らぬ人を添えて
「暇ですねぇ」
今までの暑さから一変して風が涼しいとある日。西区総合物流センターにて、あまりにも仕事が早く終わったので、現在は暇を潰すために事務所にておっちゃん達と仲良く話していました。
「だって観夢ちゃん、ここに来てから……何分ぐらいだ?」
「一時間も経ってねぇな」
「まだそんなでしたっけ?」
私はローテーブルにあったポテチを一つまみしながらそう答えます。
「そんなですよ〜観夢さん」
「全くだよ。俺らの出番ちょっとしか無かったじゃねぇか!はっはっはっ!」
私を含めた四人の中で、一番ガタイが良く背の高い男性が大声で笑いました。
「バイト復帰で少し張り切りすぎましたね!」
「そうだな――「プルルルッ……」あれ、監督から電話だな」
「あ、なら僕出ます」
「任せた」
そのやり取りが終わった後、ちょっと小柄な男性が近くにあった電話へと向かい、受話器を手に取ります。
「ピッ」
「はい、こちら事務所です……はい。探してる人ですか……はい。分かりました」
「ガチャッ」
男性は受話器を元の位置に戻し、こちらへ向きます。
「観夢さんに会いたい方がこちらに来るそうです」
ふむ、依頼人さんでしょうか?
「会いたい人、つう事は退院祝いとかか?」
「観夢ちゃんの事だし、あり得るかもな」
「そうですね〜。いやしかしながら、観夢さんが元気そうで何よりだよ〜」
「突然バイト来なくなって、心配したら入院したって聞いて驚いたんだぞ」
「その説はお騒がせしてすみませんでした。でもこの通り、私は元気ですっ!」
そう言って私はサテングローブと長袖のパーカー越しで力こぶを出すポーズをします。
ほんとは袖を捲りたい所ですけど、まあ仕方ないですね〜。
「あの!こんにちは!!」
私がムキムキポーズをしていると、突如部屋の入口の方向から青年のような声が聞こえてきます。
「あ、さっき連絡があった子?観夢ちゃんを探してる……」
なら声的に探していた人は依頼人さんではない……なら誰なんでしょうか?
「もしかして、観夢ちゃんの彼氏かぁ?」
「そうなら観夢ちゃんも隅に置けないな」
「か、彼氏……」
私は部屋の入口を振り向きます。そこにはぱっとするような、しないような……ごく平凡な高校生といった見た目の男性がそこにいました。
「いや、誰ですかぁ!?」
本当に知らない人ですね……もしやストーカー!?いや変装したARCの刺客の可能性もありますねということはここは様子見をしたほうがいいのでは……!?
「俺は、
この人怪しさ満点ですねぇ!?いや一周回って怪しく……いえ怪しい……。
「ってことらしいよ〜、観夢ちゃんっ!いってらっしゃ~い」
「えっ!?わ、分かりましたぁ〜!あ、今日はみなさん本当にありがとうございましたっ!また顔見せに来ます!」
その場のノリで夢跳って人に着いていくことになりましたが……普通の高校生だったら適当な理由つけて帰しましょうかねぇ……。
――――――――――――――――――――
いざという時の為に事務所の部屋から場所を移し、私と夢跳くん……?は事務所の裏に来ました。
「「――あの……」」
お互いの声を掛けるタイミングが被り、声が重なります。
「あ、先どうぞ」
「では、単刀直入に聞きますが、貴方は誰ですか?」
「えーと、起眞市立高等学校、2年A組の望月夢跳です。あ、これ学生証……」
私の問いかけに対してこの度胸も何も無いド陰キャな回答……学生証は――
「なるほど、学生証も偽物じゃ無さそうだし……」
ふむ。ド陰キャなただの高校生でしょうか。
「あそこの学生さんなんですね〜っ!なら信用できますね。私は南風 観夢ですっ!使山神社で巫女をしつつ、色んなとこでバイトしてま〜す!」
取り敢えず自己紹介(嘘)ですね。
「使山神社って、あの使山神社っすか……?」
ふむ?
「はい!使山の頂上にある神社ですが、どうかしましたか?」
「お、俺あそこで一回死にかけたことがありまして……アハハハハ……」
死にかける……つまりは地雷の存在を知っている。でも夢跳くんには外傷は無く全くの無傷……これは夢跳くん、ユミーくんと同じように能力者のようですねぇ。
いや待ってください能力者ぁ!?
「っ!?そ……それは災難でしたぁ……ねぇ〜……」
「……使山って標高が高いじゃないですか。あそこから写真撮れたら良いなって思ったんですけどね、死にかけたんで」
「……写真、撮るの趣味なんですか?」
取り敢えず、話題を逸らすことに尽力しましょうか!
「はい!写真部に入ってるんすよ」
「じゃあ、また気が向いたら写真撮りに来てくださいねっ!」
「あ、いや、あの数の爆発は「あ、ちょっと待ってくださいね……今スマホ……を取り出しますから……」
あっぶなぁ〜!ギリギリセーフ……。というかやっぱり地雷知ってましたね。
という事は地雷を踏んでも夢跳くんは生きれるのでしょうか……恐ろしいほどの再生能力か、とてつもなく硬くなれる能力か、可能性は低いですが、未来を見る能力か……。
あ、そういえばスマホを取り出すと言ってしまいましたね。ちょっと代償は高いですけど能力で遠隔生成しましょうか……折角ですし、連絡先を交換しておきましょう。連絡先を依頼人さんに渡したら身元特定出来ますかね?
「はいっ!こちらスマホです!連絡先交換したいのですが、えーとぉ……どうやるんでしたっけ……」
「スマホ貸してください、俺やりますよ w」
私は夢跳くんにスマホを渡します。
どうでしょうか、生成したやつはちゃんとスマホになってますかねぇ。
少しの緊張感を持ちながら夢跳くんを待っていると、スマホが私の元へ返されました。
無事に連絡先入っているみたいですね。
「わぁ〜!出来てる!ありがとうございますっ!あ、もし神社に来る覚悟があれば連絡くださいね!危ないので!」
「あ、はい……」
「ああー……でもあんまり来ることはオススメしませんよっ!では、時間なのでこれで失礼しますねっ!」
「えっと、ありがとうございました」
よし、このまま押し切れそうですね!
「こちらこそ、楽しかったですっ!」
「それでは俺もここで失礼します」
取り敢えず、私は夢跳くんのいるこの場から早めに立ち去ります。
いやぁ何だか不思議な子でしたけど……何と言いますか、ああいうタイプは――
「私とも関わらない方が良いのかもしれませんね」
まあ何が起こるか分からない起眞市の事ですし、夢跳くんがあの後変な方向に踏み出そうが踏み出すまいが知ったことではありませんが。
それはそれとして今日は何だか濃い日でしたねぇ……久々に帰りで銀色のやつでも買って帰りましょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます