私にお薬を添えて

「姫、落ち着いたかい」

「そうですね……。いややっぱ落ち着けません。白いワンピースという清楚系の衣装にピンク髪……ちょっとショッピングモール行きます?」


 依頼人さんは能力者では無いと思ってましたけど、実は能力者で……見た目が凄いサキュバスみたいで、あれ?男だったらインキュバス……いえこの際はどうでも良くてというか依頼人さんからいい匂いしますねぇ……。


「その調子だと飢餓感とか吐き気とかも無さそうだね。でも一応診ておこうか」


 そう言って依頼人さんは顔を近づけ、やがておでことおでこをくっつけます。

 近くに来ると尚更いい匂いがするし顔が良いですっ……。


「ふわぁぁ……!これがおでこっク「少し静かにしてもらえるかな」はい……」


 絵面だけ見ると女の子同士がおでこをくっつけて目を閉じあっている……もうこれ実質◯ックスですよねセ◯クス!


「姫、よこしまな事は考えていないと僕は信じているよ。……まあバレバレだけど」

「うぐっ……」


 見破られてましたか……。妙な所で勘の鋭さを発揮しないで欲しいですね〜。


「ふむふむ……一重の眼を中心にホルモン系統に干渉しているようだね。これなら得意分野だ」


 すると、依頼人さんとくっつけた私のおでこの部分から、何かがすーっと消えていくような感覚に見舞われます。

 まるで風が頭の中を通るようで心地が良いですねぇ。


「よし……成功はしたみたいだけど、調子はどうだい」

「とっても健康ですね!」

「良かった。ああそれと、あれも作っておこうか」


 依頼人さんは戦闘員ちゃんに何かのハンドサインを送ると、戦闘員ちゃんは前に見たことのあるような空の小瓶を取り出します。


「姫がこうなる度に僕がわざわざ出向くのも面倒だからね。ちょっとした治療薬を作るよ」


 すると依頼人さんは空の小瓶に人差し指を入れます。それと同時に、何やら薄いピンク色の液体が人差し指から染み出し、あっという間に小瓶の中身が謎の液体で埋まりました。


「た……えぇ?それ体液ですか?」

「そんな所かな。嫌だったかい」

「嫌という訳では無いのですが……いやまさかまさか……」


 私は例の研究所襲撃作戦の時に飲んだあの薬と、今依頼人さんが作った体液が重なって見えてしまいます。


「ああ、例の薬の事かい。あれはユミーくんの耳から抽出した……言うなれば『万能型再生細胞』と、僕の体液を混ぜたものだ」

「体液を飲んじゃった私ってもう依頼人さんの眷属なんですか!?」

「勘違いが酷いね……」


 依頼人さんはやれやれと呆れたような目でこちらを見つめてきます。


「一先ず、これを渡しておくよ」

「キュッ……」


 そう言って依頼人さんは先ほどの小瓶を渡します。私はそれを受け取って、ふと空に掲げてみました。

 見れば見るほど綺麗なピンク色ですね〜。


「ありがとうございます。それじゃ、森崎喫茶にでも行きましょうか!」

「僕これから仕事あるんだけどな……」

「むっ。私にこんな事を隠してた罰です」


 私は依頼人さんに向けて指を差します。


「分かったよ」

「あ、この子も一緒に行くんでよろです」

「あぁ〜……一応、この後の予定は空けさせてるけど、君はそれでいいかい?」

「はい。慣れてますので」


 ではでは満場一致ということで!


「行きましょうか!森崎喫茶!」

「ところで道は分かるのかい?」

「わかりません!」

「はぁ……いつもの君だね」


 この後、三十分ほど迷ってようやく森崎喫茶に着いたのですが、それはまた別のお話ということで、一杯行ってきます!

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