コラボ回後編☆どうやら平和に終わりそうですねっ
「――見せてやろうじゃないか!!」
少年くんの声がふと聞こえてきます。
どうやら喜びは
「うぇぇ……」
一瞬ながら怪力を見せつけた少年くんは、木などの遮蔽を活用しながら、けれどもまっすぐにこちらへと向かってきます。へんてこなブーツは……制御できないので使ってないのでしょうかね。
「バァァン!!!バァァン!!!」
私もそれに応戦して、適宜リロードを挟みつつ、少年を狙って弾を放ちます。しかしながらまあ当たらないこと当たらないこと。私の弾は読みやすい軌道なのでしょうか……。
「推定距離100m!!!!今だ!!!!見晒せ毎分1200発の発射速度!!!!!」
すると少年くんは反撃に出たのか、恐ろしい量の弾がこちらに向かって飛んできます。威力は弱そうだったので身体で受けてもよかったのですが、念の為追加装甲で受けきります。
いやぁ、戦闘となるとふざける暇がありませんねぇ……。
「バァァン!!!バァァン!!!バァァン!!!」
少年くんの反撃が止んだのを確認してから、私は攻撃を再開します。まあ、またしても当たらなかったのですが。
わぁぁぁん!私はどうせ脳筋格闘巫女ですよ何が悪いですかぁ!
「ドンッ!!」
と、心の中で嘆いていると、いつの間にか例のブーツを使ったのか、空高く飛び上がった少年くんが、先ほどとは段違いの精度でこちらに射撃してきます。
3点バーストってやつでしょうか?それともマニュアル?何にせよそこそこ危険なので、私は再び追加装甲で防御します。
このGみたいな生命力といいすばしっこさと言い何というかもう――
「しぶといですね……!」
本音を漏らして、私はほぼほぼ理論値に近い射撃速度を少年くんに向かって撃ちます。
こんなトリガーハッピーな速度でも大丈夫です。銃自体はパワードアームの素材でできているので。
いやぁ、ほんとに私好みの性能ですねぇ。
「バァァンバァァンバァァンバァァンバァァン!!!」
まあほぼ不可避な弾を放ったはずですが、空中でも少年くんのしぶとさは健在なようで、身をひねったりしながら、ワンマガジン分の弾を全て避けきってしまいます。
避けないで下さい値段が高いんですその弾。一発1000円以上はするんですよその弾ぁ!
「おりゃあ!!!!」
そうして私は呑気にマガジンを変えていたりなんなりしてる間に、少年くんは頂上の地面に着陸してしまいます。
少年くんの目は銃を捉えているようですね。となれば遮蔽物を作る事が優先でしょうか。
「バァァン!!!」
様子見で牽制射撃を放ちますが、先読みされて避けられてしまいます。軍人さんでも無理ですよそれ。
「そいっ」
まあ化け物の話はさておいて、私はパワードアームの機能をフル活用して地面を殴り、ちょっとした遮蔽物を作り出します。とは言いましても、前々から準備していた、神社付近で戦闘する用の土に偽装した鋼鉄製の遮蔽物ですが。
「パワードアーム!?」
そうして出てきた遮蔽物に驚くかと思いきや、少年くんはパワードアームの方に驚いていました。
まあ驚く観点が予想外でしたが私は気にせず、対物ライフルを遮蔽物に隠すように置き、代わりに忍ばせていたS&W M500を取り出します。
そうしてひょこっと顔を出し、まずは一撃を撃ち込みます。
「あれは、M500!?」
「バン!!」
少年くんが新しい銃に驚く間に、私は左手の付け根を狙って撃ち、左手を持っていた銃ごと弾き飛ばします。
「まずい!!!時計が!!!」
そっち気にします?まあ、関係はないのですが。
「バン!!」
吹っ飛んだ左手に目を逸らした隙に、私は少年くんの心臓めがけて弾を放ちます。
しかしながら少年くんは人間を辞めているんでしょうね。人間の一番大事な部位を撃ったにも関わらず、まだ動いているようです。
一応ですが、遮蔽物越しに彼を覗き込んでみます。
「くそ!!もろに喰らった!!!」
少年くんはそう言い放つと、斜面を銃と一緒にどんぐりころころしている左手を掴み取り、それを少年くんは自身の身体に押し付けて再生させます。
うんうん……うん?
「仕方ねえ!!あれで行くか!!!」
また少年くんがそう言うと、左手につけた腕時計から拳銃を取り出し、先ほどの銃をしまい込みます。
うんうん……う、ん……?
そうして私が首を傾げている間に彼はコッキングを行うと、やや噛み合わないような音と共にコッキングが終わります。
「山鹿……あいつ、やりやがって……。よし!!!行くか!!!」
ちょ〜っと私の理解が追いつかない部分がありましたが、私は改めてS&W M500を構え直し、斜面を上る少年くんを待ちます。
少年くんのいる方向から、手榴弾とスマホが投げられるのが視認できました。
スマホが投げられたのは不自然ですが、それを私はわざと見逃し、脅威度が高いであろう手榴弾を処理します。破片等は遮蔽物で防ぎ、取り敢えず脅威は去っただろうと、銃をリロードしてから下ろして、ひと息つきました。
「やっほー巫女さん」
「ひっ……!?」
ひっ、ふぅ〜……いや待ってくださいいつから背後にいたんですかいやそれよりもまずは少年くんを無力化するのが先でいやしかしながら銃が少し軽いのが気になりますねいや杞憂であって欲しいのですが――
「カッ……」
「え……あれ?リロードしたはずなんですけどぉ……?」
「弾は抜いておいた。気づかなかった?後ろに居たの」
ぜ〜んぜん気づいていませんでしたぁ!これ負けましたねぇ!一応M107CQくんも確認しておきますかぁ!
「バァァン!!!」
いやあるんかぁい!?
少年くんごめぇん!?
「さてと……。これで武器は全部ないないしたんじゃないか?」
「あ、あなたの目的は!?わ、私を殺すことですか……!?」
もうもはやテンパって少年くんにどストレートな質問を投げかけます。
「まさか?俺はただ単にここは私有地だから出て行って欲しいって言うように言われただけ。まさか、戦闘になるだなんて思ってもいなかったよ」
確かに私有地ですけどねぇ。ということは起眞市の職員関連……?いやそれは置いておいてまず聞くことがありますねぇ。
「さっきどうやって急に後ろに……?手榴弾を投げたのはあなたじゃないんですか!?」
「もちろん俺だよ?でも俺は実はインターネットに入り込める能力があってさ、手榴弾と一緒にスマホも一緒に投げたんだよね。俺はそこから出てきたわけ。どう言うことかわかるかな?」
つまる所は電波系の能力……スマホや腕時計の中に拡張された空間を作り出し、そこを自由に行き来できるのでしょうか……。次はスマホも投げられたら撃ち落とさないとですねぇ。
「それで……なんで、君は俺のことを攻撃したのかな?」
「え、えっと……それは研究所の方々だと思ってぇ……」
「とりあえず、俺はその研究所の奴らとは違うと思うぞ?だからその、武器をまず置いてくれないか?俺も一応、丸腰なわけだし」
ほんとかなぁ?腕には腕時計がついているし、その気になればしまっていた銃も出せるはず。まあでも、多分素の取っ組み合いなら勝てると思うので、銃は置いておきましょうか。
「良かった。まあ、俺は敵じゃないわけで、もうこんな不毛な争いはやめにしようぜ?弾丸の出費が痛いだけだ」
まあそれは確かに。
「……仕方ないですね」
「良かった!じゃあ、仲直りとして握手しようぜ?国の長って条約結ぶ時必ず握手するらしいしな!」
「はぁ……まあ、いいですけど……」
そのたとえ要りました?とツッコむのもやぶさかなので、私は大人しく握手をしようと、手を差し伸べると――
「うわあ!?」
と段差に躓いたのか、少年くんは思いっきり転び、私に被さるようにして倒れます。
「痛てて…すまんかった…って、あ」
「……?」
少年くんはその場で謝ろうとしますが、何かに視線を取られたまま、意気消沈とし始めます。
何か悪いことでもあったのかと、取り敢えず視線を同じ方向に向けますが。そこには少年くんの手が胸に当たり、ラッキースケベを発動している絵面が見えました。
「ご、ごめんなさ――」
「ひ……ひゃあ!!!」
乙女のように恥ずかしがった私は、パワードアームの能力フル活用でぶん殴り、少年くんを思いっきりぶん殴っていました。
一番やばいであろう、フルバーストまでは出しませんでしたが、フェーズ2の限界値まで威力を上げてしまいましたねぇ……。
まあよくよく考えれば……ほぼほぼまな板に近い胸を触られても、どうって事は……あります。そうですねあります。
「フォーアウト☆……あっ」
気を紛らわすように、何となく少年くんが飛ばされた方向を見てみると、木の近くで片足吹っ飛んで気絶している少年くんが見えました。後で回収するとしましょうか。それよりもですねぇ……。
私は一旦神社の中へと入り、無線機で依頼人さんへと通信を繋ぎます。
【――はいはいもしもし。こんな時間に珍しいね?】
「聞いて下さいよ依頼人さん――」
そこからは少年くんに関する情報や、交戦内容を細かく話していきました。
【あ〜……それ多分、前に言っていた特殊グループの子だよ。諜報部が調べたリストにはユミーって書かれているね】
「ユミー?」
【電脳特殊捜査隊、その第六課に所属している子だね。今は起眞市で色々やっているようだよ】
依頼人さんはリストを見ているのか、ふ〜ん、と興味深そうに呟きます。
【しかしながら、無線機にして本当に正解だったね。スマホで通話をやろうものなら、もれなくその子に寝首を掻かれていたかもだよ?】
「サラッと怖いこと言わないでください」
【もしかしたら、の話さ。電脳特殊捜査隊に関しては秘匿情報も多い。今日は本当に興味深いデータが取れたよ】
そろそろ終わりごろだから通信を切ろうかと、そう思案すると、依頼人さんから一言付け加えられました。
【そうだ。ユミーくんは今どこにいるかな?】
「気絶していて、近くでくたばっています」
【なら、耳を削いでくれるかい?】
「はい?」
【何かに使えるかもしれないんだよ。一生のお願いだ。そちらでユミーくんの耳を保管してくれたら、それでいい】
「……分かりました。それじゃ、通信を切りますね」
【うん。後、○月○○日の深夜に使いを送るから、その子達に耳を渡しておいてくれ。それじゃ】
それを皮切りに通信が切れます。何やらどっと疲れたような感じがしてきました。ただ後一仕事ですかね。
私は神社から出て、気絶しているユミーくんの元へと向かいます。まだ気絶は続いているようですね。
私はユミーくんをそっと持ち上げ、麓まで送る事にします。気絶させた人を放置して放っておけないのもありますが、勝手に帰るだろうと見過ごして、何かにされたらたまったものでは無いですからね。
こうして、夕暮れ時に差し掛かる日を見つめながら、私の長い一日は一区切りをつけたのでした。おひたしおひたし。
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