不穏な空気が温まってまいりましたっ

 前回の事件……早とちりぃ……から数日が過ぎました。あの後何事もなく一日を終えたのですが、依頼人さんからモーニングコールが届きました。

 依頼人さん曰く、「麓まで音が届きそうだった」とのこと。いやぁ、早とちりって駄目ですね!

 とは言いましても、結果としては日常に戻る事が出来ました!

 まあ、私の存在自体が非日常アブノーマルなんですけどね!てへっ☆


「嬢ちゃん、こっち頼む」

「今行きま〜す!」


 というわけで日常に戻った本日も本日とて、バイトに勤しむ毎日を過ごしています!本日は西区総合物流センターでのバイトです!

 なんでも最近は西区の工場に大量の依頼が入ったそうで、いつもより活発な物流センターが見えていますね!


「A区画、人手が欲しい!誰か来てくれ!」

「私が行きますよ〜!」


 勿論ですが、私もシフト増し増し労働多めで働いています!

 何でこうなっているのかおっちゃんに話を聞いた所、金属類の仕入れが多いらしく、人手や機械が全然足りないのだそうです!

 前にあった暗殺の一件と関わりがあったりもするかもしれませんが、まあそこらへんは神のみぞ知るかにのみそしるって事で私は首を突っ込みたくはありませんね!


「よいしょっ……?」


 そうして考え事をしていた頃、たまたま持った金属の塊が他のと比べてやや軽いことに気づきました。私の気の所為なら良いのですが、私の第六感がこれには違和感があると言っているんですよね……。


「……なるほど」

「パワードアーム・フェーズ2、起動」


 そこで私はその金属の塊を持って、一瞬だけ持ち場を離れることにしました。首を突っ込みたくないと言いましたね。あれは嘘です。とても早い手のひらドリルですね!


 というわけで私は誰もいかないような廃倉庫へと、人目を盗んで行き、そこで金属の塊を下ろします。


「ふぅ……そいっ!」


 金属の塊を手で掴み、思いっきり手を振り上げると、金属は最初から切れていたように綺麗に割れました!まるで金属の箱ですね!


「ほほぅ……」


 そして気になる中身ですが、中には立方体に形作られた謎の機械が入っていました。

 底面には「一重の眼」とだけ文字が刻まれています。


「ふむぅ……研究所関連ですか」


 一重の眼……話せば長くなるんですが、すっごい危険な「ARC」って研究所が開発した、すっごい危険な眼なんですよね。

 まあ本来あっちゃいけないものぐらいの認識で良いのですが……それが物流センターに紛れてここにあるみたいですね。


「今ここで壊しちゃっても良いのですが……いや面倒ですね!壊しましょう!ふんっ!」

「グシャァ!!」


 というわけで私は一重の眼が入っているであろう機械をぶん殴って粉砕します。出来るだけ、中身は傷つけないように。


「全く、紛い物を量産したとて……いや、そこそこの戦力にはなりますよねぇ」


 一重の眼があと何個量産されているのか、それをARCが自由に扱えるのか。ちょっと考えただけで恐ろしいですけど、まあ大丈夫ですよねっ!


「ふんっ!」

「ガンッ!」


 長いこと社会の闇に接触するのは危険なので、取り敢えず、金属の塊を元の状態に戻します。そうして金属の塊を運びなおして戻ろうとしたその時――


「がっ!?」


 側面から強力な打撃を受け、一メートルほど吹き飛ばされます。


「っう……」


 受け身を取って攻撃を受けた方向を振り向くと、そこには黒ずくめの衣装を纏った得体のしれない輩がそこにいました。

 全身を黒で纏った中、唯一見える目は私と同じ濁ったレモン色でした。でも輩の方がもっと濁ってますね!


「……一重の眼を渡せ」


 輩は端的にそう言います。


「一重の眼?もう壊しちゃいましたけど?」


 私はしらばっくれるようにそう言います。


「そうではない。……言い方を変えよう。原本オリジナルを寄越せ。そうすれば研究所に戻るだけで済ましてやる」

「なぁんですかぁ……それならそうと言ってくれればよかったの、に!」


 私は語尾と同時に一気に距離を詰めます。


「パワードアーム・フェーズ3、起動」


 同時にパワードアームの出力もリミッター寸前まで上げて、私は不届きな輩にアッパーを食そうとしますが――


「ふっ」


 奇襲失敗。うーん惜しい。


「敵対行動を感知。戦闘申請を受理……」


 輩は一歩後ろに引き、間合いを取りながら意味深な言葉を発します。まあ何度も見た光景ですが。


「許可を認証。戦闘を開始」


 その言葉を皮切りに、輩は目に手を当てます。


「一重の眼の使用を申請……許可を認証」


 すると輩の顔の横が赤く染まり、目からは銃が取り出されました。それと同時に銃が取り出された目は黒く染まり、ボトリと床におちます。


「……待って待って待ってまぁっ!?」

「パスッ!!」


 私は本能で危険を察知し、とんでくる銃弾を間一髪で回避します。その後転がりながら近くの遮蔽物に滑り込みセーフし、ひと息つきます。


「あわわわ……」


 考える限りで最悪の事態を引きました。見ました!?あれが一重の眼の能力です!自分の望んだものを、多分制限付きとはいえノータイムで取り出すことが出来るんです!やばいですよねそうですよやばいんですよぉ!? 


「考えろ……考えろ……!」


 廃工場、バイトだから武器無し、近くにはなにも無い……いやある!


 というわけで私は何をとち狂ったのか遮蔽物からひょっこり顔を出します。


「パスッ!!」


 当然ヘッショを狙って相手は弾丸を撃ちます。しかしここが好機。


「ほっ!!」


 持っている動体視力全てを総動員して弾丸を掴み取り、そのまま遮蔽物に隠れます。


「ひっひっふー……ひっひっふー……そぉい!」


 そして化け物じみた身体能力を使って距離を詰めつつ廃倉庫の天井ギリギリまで飛び――


「ファイトォ!」

「パワードアーム・バーストフェーズ!」


 弾丸を思いっきりぶん投げます!


「ドンッ!」

「ごっ!?」


 弾丸をもろに食らい体勢を崩した隙を見逃さず、着地してからすぐに頭を掴みぃ……!


「グシャァ……」


 フィニッシュ!ミッションコンプ――


「シューーー!!」


 痛い痛い痛い痛い!!パワードアームの排気熱がぁ!?熱が痛くてカプサイシンになっちゃう!?やめてパワードアームごと熱くならないで痛いよぉ!!

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