能力者にシリアスを添えて
病院に昔の夢を添えて
昔の夢を見ました。遠く、遠く、私が彼方へと葬り去った記憶の欠片。
本当は思い出したくも無いけれど、過去を振り返りたくないけれど、それでも私の中の何かが必要としているのでしょうか――
「能力適合率45%。被験体最高記録です」
私は目を開けると、抑揚を捨てた声が響きます。
「実験を続けろ」
「――あっ、がっ゙……い゙ぃ゙ぃ゙!?」
私の目の前には、茶色のロングヘアーをした幼い少女と、ガラス越しに見える研究者達が見えていました。
幼い少女の頭にはチューブが何本も刺されており、チューブを通って何かの液体が注がれると、その少女は悶え苦しみます。
私はソレを、黙って眺めていました。
「適合率、50%を突破。脈拍、酸素濃度、共に正常値を保っています」
「当たり、か。75%まで続けよう」
「了解」
何かの操作盤を操る一人と、指示を出している一人。その他にも何人かはガラス越しにいますが、その二人だけは顔が鮮明に見えていました。
「ゆ゙、る゛……ι゛、て……」
少女の方は必死になって何かに抵抗していますが、両手両足、胴体、首が拘束されており、全く動けていませんでした。
「適合率、60%」
「ぁ゙……ぅ――」
適合率、というものが60%を超えた頃、少女はぱたりと目を閉じ、動かなくなります。
「被験体、気■を確■」
「構わ■。■■■を続■ろ――」
その言葉を最後に景色にノイズが走り、次に見えたのは白い部屋に蹲る一人の少女でした。
「私……わたしは……なんだ……なんで……なんでしょう……」
少女はうわ言のように何かを繰り返しています。
よく見ると、少女の背は先ほど見た景色の時よりも少し大きくなっていて、体つきも全体的に膨らみを帯びていました。
「私は、なに?」
――――――――――――――――――――
何かに跳ね上げられたような感覚と共に、私は飛び起きます。
「ここは……?」
ベッドや点滴、小さな棚や花の刺さった花瓶など、最低限度の設備を残した、白を基調とする無機質な部屋に私はいました。
「zzz......」
私が概ねの状況を把握すると、小さな寝息を立てた男性……に目が止まりました。
一重に男性とは言いましても、私より少し高いぐらいの身長に、華奢な体つき。黒色の長い髪を一つに纏め、女の子らしい可愛い服を来た男性です。ええ、いわゆる
「依頼人さ〜ん……起きてくださ〜い」
私はその男性を揺すって起こそうとします。
「ふわぁ……」
私の声ではない高い声が男性から聞こえると、その男性はむくりと起きながら腕を大きく伸ばし、そして眠たそうな目をゆっくりと擦っていました。
「今は……あっ!?観夢、起きたのかい!?」
男性……もとい依頼人さんは驚いた表情を浮かべます。本人的には口を大きく開けているつもりなのでしょうが、小さくしか開いていませんね〜。小動物みたいで可愛いです。
「起きましたよ」
「良かったぁ……一日中眠っていたから心配したよ」
一日中……どおりで長い夢を観ていたわけですね。
「医者からは目覚めてから全治1週間と言われた。軽いリハビリもあるそうだ」
「その間の食事はどうすれば?」
「治療費諸々は僕らの方で既に支払いを済ませてある。護衛も付けておくから、ゆっくり休んで欲しい」
「それ休めるんですかねぇ?」
「休んでくれ」
依頼人さんは顔に薄く笑みを浮かべてそう言います。
「可愛い……」
「姫!?」
つい本音が漏れたのでしょうか。私は無意識のうちに口にしてしまいます。
依頼人さんは感情を処理しきれず恥じらっているのか、手やら足やらがもじもじと動いています。
「あ、いや……あの、あんまり容姿については、触れないで欲しい。どうすればいいのか分からない、から」
うっ(尊死)
「姫!?起きてくれ姫!!姫〜!!」
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