能力とはロマンですねっ
ここを出る方法を考えてから何分か。
まずは真空になる前に機械を止めようと、私は機械を壊さんと格闘し続けました。まさか普通の依頼かと思ったらこんな展開があるなんて予想出来ませんよ……。
「ひゅ……ひゅ……」
幸いな事に、機械は全て壊すことが出来ました。しかし室内の空気はほとんどなく、私は爆発の影響と酸欠による、苦痛と脱力感に襲われます。
このまま気絶して回収される訳にはいきませんが、全く困ったものですね。
……まあ、散々ARCの方々が言っていたオリジナルを使えば解決できる問題ではありますが。
それ以外に方法は見当たらないですし、もう使うしかないじゃないですかぁ……。
「さて……やりましょうか」
私はそう言うと、再び瞳を鈍く光らせます。その後、右側の聴力が完全に失われ、視界の端に黒く変色して腐り落ちた肉塊が通り過ぎました。
私はそれを確認して、右手にあるリボルバーをしまい、両手を目の前に持ってきます。
「クチャッ……」
と、その肉塊が床に落ちた瞬間、目の中から異物感を感じ始めます。それはやがて耐え難い激痛へと変わっていきました。
「あ゙っ゙、ぐ……!」
目に出現した異物を、私は頑張って引き抜きます。
「あ゙……っ……!」
引き抜いた物は勢いよく手から離れ、私はそのまま尻もちをつきました。
引き抜いた物は、私の持っている対物ライフルの長さに近い、一つの銃でした。どの銃の外見とも似つかない、近未来的な外見をしており、現代にあるもので表すなら、レールガンが一番近いでしょうか。
その銃の左側にはディスプレイとコンセントがあり、ディスプレイには「5」と表示されています。
色は勿論紅白ですね。ここでも巫女アピールは欠かしません。
「行きますよ!」
私はそのレールガン風の銃を両手に取って立ち上がり、貫けないと言われた装甲壁へと向けます。
私が引き金を引くと、ディスプレイに変化が生じ、進行バーが表示されました。その進行バーが進んでいくと同時に、大きな作動音が響きます。
そして進行バーが最大まで溜まった瞬間。
「ファイアッ!」
「パンッッ!!!!」
乾いた甲高い音と共に装甲壁は爆発を起こし、人が通れる程度の大きな穴。そしてその先に月明かりに照らされた空をつくりました。
同時に空気が室内へと入り込み、私はやってきた新鮮な空気を肺一杯に吸い込みます。
「いやはや、持つべきは
研究所に月明かり。ロマンチックな雰囲気とは裏腹に、私はこの世にあってはならない物を解き放ちました。おまわりさん私です。私がやりました。
それはそれとしてですが、私を回収して実験祭りにしようとするARCの奴らはまだ来なさそうなので、少し休憩してから立ち去る事にします。
結果として、機密文書は焼けてしまって残念ですが、それ以前に私が捕まったら意味ないですからね。命大事にですよ。聞いてますか命を粗末にしている世界のマッドサイエンティスト。
とはいえ、平和な街にわざわざ研究所をつくるまでやっているとなると、私ものんびりしてられないのでしょうか――
【……あ〜、あ〜、聞こえるかい?】
「聞こえてますが……?」
すると突然、通信機からノイズの入った声が聞こえてきます。
……そういえば任務に集中していて通信機つけっぱなしなの忘れてました。テヘペロっ☆
というか爆発に巻き込まれるはずですが、無事だったんですね〜。修理代が浮いてラッキーですね!
【無事だったんだね……良かった】
「何かあったんですか?」
【姫は気づいていなかったんだ。どうやらこちらが停電を起こした後にジャミングを受けてしまってね。無線を繋げなかったんだ】
ジャミング、あったんですね。あったんですね!?
ということはですよ……私がジャミングに気づいていたとしても、あのまま気絶していたら依頼人さんの対応が遅れていたと……。
ひえぇ!!
「そうだったんですか!?」
【あぁ……うん。本当に気づいていなかったんだね……】
私が驚いて返答をすると、依頼人さんは呆れた声でそう返します。
【とにかく、無事そうで何よりだ。機密文書は回収出来たかい?】
「それがですねぇ――」
私はここに来てからの事を説明していきます。建物内の兵を制圧した事、機密文書を回収した事、した後に理不尽トラップに嵌められた事。
【
「……これ秘匿通信ですよね?」
【あっ】
「あっ」、その言葉だけで何なのかは察せましたが、その後依頼人さんがボタンを押し、秘匿通信へと変えたようです。
【……今日の所は撤退してほしい。後の事はこちらで始末をつける。今日はゆっくり休んで】
「分かりました」
【通信のパスは繋げておく。何かあったら連絡して】
「了解」
私はその言葉を合図に、上へ大きく跳躍します。床から装甲壁へ、装甲壁からトラップに落とされる前の床へ。
その後私は来た道を素早く戻り、地上へと無事に戻って来ました。
「さて、急いで戻りましょうか」
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