機密文書と研究所ですっ

 喫茶店に行った日からきっちり二日後。

 月明かりに照らされる中、私はライフルやらリボルバーやらを背負って北区の一番西側にある森に来ていました。

 地獄の依頼三昧初日は、用途不明の施設からの資料奪取と、破壊工作だそうです。


「はぁ……」


 私は遠くの茂みから、視力を活かして、遠くにある建物を見つめます。

 その建物は一階建てのこじんまりとした建物で、建物の前には武装した二名の警備員がいます。ぱっと見ですが、外人さんっぽいですね。


「ふぅ……「ピッ」準備完了です」

【了解。予定通り10分の妨害工作を仕掛ける、合図で突撃してほしい】

「わかりました」


 私はライフルを軽く見つめ、その後立ち上がって足に力を入れます。


【3……2……1……今】

「ふっ!」

「パワードアーム・フェーズ1、起動」


 建物の電気が消え、私はパワードアームと暗視ゴーグルをつけて一気に突撃します。


「Wha――「グシャァ」」


 タックルで建物とプレスしてまず一人。


「――!?」

「バン!」


 続けざまにリボルバーでもう一人を撃ち抜きます。


「よし……デトロ!開けロイト市警だ!!」


 私は敵の処理を終えると、即座に扉をぶち破り、建物内に突入します。一見すると駐屯所のような建物ですが……。


「ふむ、確かここの棚が隠しスイッチで開くんでしたっけ。面倒臭いですね!」

「ガンッ!!」


 私は面倒臭がって棚を掴んでそぉい!すると、なんと地下へと続くはしごが出てきました。


「ほっ」


 はしごを律儀に降りる時間が惜しいので、私は穴を自由落下で降ります。

 フリ〜フォ〜〜ル!


「……ガンッ!」


 しばらくして、私は鈍い音を立てて鉄の床に三点着地をします。


 すぐさま目の前を目の前を見ると、月明かりすら通らないような、暗く長い廊下が確認できました。


「ウゥーン!」

「侵入者が確認されました。直ちに排除してください」


 私を拒んでいるのか、続けざまにサイレンとアナウンスが鳴り響き、異物の排除を訴えます。随分と派手な歓迎ですね!


「でもこんな音の届かない閉鎖空間に私を持ち込んだのが運の尽きですねぇ……」

「パワードアーム・フェーズ3、起動」


 私はレモン色の目を鈍く光らせると、同時に足がレモン色の光に包まれます。


「っ……!」


 口の感触が多少鈍くなるのを感じた後、足にはいつもより力が入るようになっていました。


「ふっ!」


 その手ごたえと同時に、私はライフルを正面に構えて一気に駆け出します。

 いつもより速い走りに慣れつつ、長い銃身のM107CQを当たらないようにしながら建物内を巡っていきます。


「hey――」

「バァァン!!!バァァン!!!」


 敵を確認したら即座に発砲。いくら足音が聞こえていようともこちらが先に反応していれば実質セーフですね!

 しかしやっぱり対物ライフルは長すぎて面倒ですね!ちょっとペースを上げつつ、リボルバーに持ち替えます!


「バンッ!バンッ!バンッ!」


 暗闇の建物内を水を得た魚のように立ち回っていると、私はあっという間に目標地点の扉に到達しました。


「ふぅ……」


 私は鎮圧が終わったことを耳で確認すると、ゆっくりと扉を開けます。


 扉の先に現れたのは、白を基調としてで出来た清潔感のある部屋でした。部屋には棚やテーブルが数多くあり、テーブルには大量の薬品類が置かれていました。まあ、何か慌てたように薬品が散乱していたりはしますが。

 どうやら、ここにいた研究員は我先にと脱走したようですね。


「ふむ……」


 色とりどりな薬品を物色したり、棚を漁ったりする中、私はお目当ての資料を見つけます。


TOP SECRETトップシークレット、実験報告書156号コピー、ですか」


 私は表紙に書かれている文字を読み上げます。なーんでトップシークレットな資料がこんなところにあるんですかねぇ。


「……侵入者の機密文書の強奪を確認。処刑します」


 ふと、無機質なアナウンスが物騒な文言を言いました。

 処刑、処刑……はい?


「ん――」

「ドォォォン!!!」


 私がそのアナウンスを理解するより早く、部屋は爆破されました。そして私は何故か下に落ち、叩きつけられます。


「あっ、ぐっ……え゛っ」


 突然のことになす術も無く、機密文書ごと私は爆発をもろに食らいます。

 火薬量はそこまでだったので多少の火傷で済んだのですが、この刺すような特徴的な痛みを与えてくる火薬には見覚えがありました。


『ようこそ、侵入者。いや、生体認証を通って再生されるならば実験体3y3アイか。どうだね、ARC製の対実験体用鎮圧火薬は』


 研究所で聞き慣れていた、人間でありながら抑揚のないムカつく声が響きます。

 私は顔を上げるとそこにはディスプレイがあり、特段清潔感の感じられない黒髪のショートヘアに、片側に濁ったレモン色、片側に黒色の瞳を持った、憎き相手がそこにいました。


「クソ食らえですよこんな火薬っ……」

『ふむ、君の事だから、罵詈雑言を放ってくるだろうな。しかし残念だ。こちらは録画音声を爆破後に仕組んでいるだけなので、そちらの声は私には届かない』

「っ……」


 どこまでも無表情を貫く、その表情筋の腐った顔が、事実を述べていきます。


『私としては直接出向き、君のデータを取りたいところなのだが、生憎本部が許可を降ろさなかった。残念だよ』


 なにが残念ですか。態度だけ見せておいて。


『さらに本部は君を捕縛しろとうるさくてね。まったく……こんな計画一つ立てるために研究の時間が潰されるのだ。だからね、君をここで気絶まで追い込む』

「ウィーン……」


 そういった直後、天井は封鎖され、壁から無数の機械が飛び出します。


『室内を真空にする装置だ。天井は分厚い装甲壁で覆っているため破れず、数分もすれば酸素は無くなり気絶する。喜びたまえ、本部に戻れば前より過激な実験が行われる事だろう……ではスタートだ』


 そう言うと同時に録画は止まり、代わりに機械の作動音が部屋を埋め尽くします。


「フン!!」

「グシャァ!」


 天井は無理だと言われたので試しに機械を殴ってみたところ、案外脆くすぐに壊れました。しかしながら――


「はぁ……はぁ……」


 開始から一分も経っていないと言うのに、もう呼吸が苦しくなってきました。あいつ、嘘付いたんですかね……。

 いや、低い酸素濃度の環境に私が慣れていないだけでしょうか。


 観夢、考えるのです……ここを脱出する方法はあるはず……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る