毎日大変ったらありゃしないですっ

 日が一番昇って明るくなっている正午のお昼頃、バイトに使うバッグを背負ってまず私が訪れたのは西区です!


 西区といえばなんですが、とにかく重工業が盛んな地域でそれを運搬するインフラも凄いんです。その交通網は起眞市の中でもトップを誇ります。

 起眞市の重工業地帯はどの製品も良品質で、この国の……何%でしたっけ?まあとにかくすごい量を生産しているんですよ。

 シェアも高いです。

 そのせいで他企業が蹴落とさんと、最近は黒い噂も絶えませんけどね。


 そして私は今、『西区の倉庫』こと、西区一番のデカさと称される、西区総合物流にしくそうごうぶつりゅうセンターという場所にいます!

 何度来ても圧巻のデカさです。

 西区の工場で使用される原料はすべてここ、西区総合物流センターに集まるので、とにかく規模がとてもデカいです。東京ドーム何個分なんでしょうか?

 まあともかく、私はこれからここで荷物の積み降ろし作業のバイトをします!


「おやっさん!観夢が来ましたよ!」

「お、嬢ちゃん。今日も頼むよ」

「はい!お任せください!」

「威勢がいいねぇ。それじゃ、今日もあそこの区画の手伝いをしてもらおうか」


 そう言っておやっさんが指さした箇所には沢山のトラックがあって、トラックのコンテナの中には梱包されたコイル状の鉄や、鉄の棒の塊とかがあります。

 私はおやっさんの指示通り、その区画へと行きます。区画には沢山の運搬車や人員と、青色のヘルメットが目印の、イカした顔の区画担当者がいました。


「おっ、遅かったな。怪力の嬢ちゃん」


 私は区画担当者にあって早々、ゴリラ呼ばわりされます。若い見た目と声とは裏腹に、おやっさんに影響された口調をしてますね。


「それ、他の人に言っちゃだめですからね?」

「悪かった。そいじゃ、あのトラックの中身を、倉庫まで運んでくれ。倉庫まで来たら、おんなじやつが何個も並んでる箇所があるから、適当に置いとけばオッケーだ。終わったら俺のところに来い」

「分かりましたっ!」


 今回私が受け持ったのはコイル状の鉄の塊を運ぶ作業でした。流石に素手では無理なので――


「よいしょっ」


 私はバッグから秘密兵器その1、パワードアームを取り出します。

 見た目は白いレースのついたサテングローブなんですが、起動してみると――


「パワードアーム・フェーズ1、起動」


 全体的にメタリックになって厚みが増し、手首の部分は赤色に鈍く光り、レースは排気孔になります。

 起動したこの子はかなり強いですね〜。一般人でも電柱が投げられるようになります。

 原産地はどっかの工場の廃墟です!そこら辺に転がってました!


「あぁ…1トン運べる例のアレか……」

「素でも怪力なのにつけるんだよな……」

「鬼に金棒、観夢ちゃんに機械だな」

「見た目がかっこいいのが解せん」


 周りにいた作業員さん達の独り言を気にも留めず、私は鉄の塊を片手でサクッと持ち上げます。

 とは言いましても、客観的に私の容姿を考えますと――

 背が低く、凹凸の少ない体つき。顔は幼いながらも整ってる方ですが、まぶた近くには薄っすら古傷がありますね。髪は茶髪のミディアムショートボブに、ステンレスで出来た紫色のスカビオサの髪飾りを付けています。瞳孔は白く、瞳は濁りきったレモン色。服は紅白のパーカーと白のロングパンツを着ている。


 こんな見た目ですね。うん。おかしいですね。気にしないってこと、前言撤回します。


「にしてもですが、この子付けてても重いですねぇ……」


 この子がカバーできるのは体感で1トン前後なんですが、それでも結構重いですね。

 まあ持てなくは無いので、私は走ってとっとと片付ける事にしました。地面に足つけるたびにドスンドスンうるさいですね。


「よし着きました。そしたらこう……慎重に降ろして……「カンッ!」……っと」

「ブシューー!!」


 私が鉄の塊を降ろすと、凄い熱気がパワードアームから噴射されます。周りが一気に蒸し暑くなりましたね。

 パワードアームから出る熱気が収まったのを確認したら、私は区画担当者さんに報告しに行きます。


「終わりましたよ!」

「相変わらず早いな。よし次は、あそこのトラックの中身を運んでくれ。」

「はいっ!」


 そんな感じで仕事を拾いつつ、私はおやつの時間ほどまで、キビキビと働くのでした。




 しばらくして物流センターにある時計で約3時頃。トラックの往来もすっかり控えめになり、私の仕事が終わりを告げます。

 私は最後の鉄の棒を置き、箒を片付け、おやっさんのところへ向かいます。


「おやっさ〜ん!」

「嬢ちゃんお疲れさん。ほいよっ」

「ありがとうございます!え〜っと……1、2、3、4……4万円ですか。今日は多いですね?」

「1日に来る大半の荷物を一人で運んだ挙げ句、片手間に雑用までこなしちまうからな。本当はもっと給料を上げるべきなんだよ。上の連中と何とか交渉して、ここまで上げてもらったんだよ」


 私が知らず知らずのうちに、おやっさんがそんな事をしてくれていたんですね……。


「2万円アップだ。嬉しいだろ?」


 おやっさんは私に笑みを浮かべます。私が見てきたおやっさん史上一番の笑みです!


「えへへっ。ありがとうございます。今日はお疲れ様でした!」

「おう。また来いよ」

「はいっ!」


 私はおやっさんに別れを告げ、次のバイト先へと向かいます!




――――――――――――――――――――




 続いてやって来たのは中央区です!都会の人々が多くて少し怖いですね!


 中央区はまさしく現代的な都会で、田舎の熊区だと揃いにくいものがあっさり揃うんですよねぇ。

 コンビニ、スーパー、電波塔、学校、その他も色々あるのが中央区です。

 私が特に驚いたのが、偏差値71もある超の付くエリート校がある事ですね。ちょっと目を疑いました。

 名前は確か……起眞市立高等学校きしましりつこうとうがっこうでしたかね。

 都会って怖いですね。


 そんな中央区にある某7と11のコンビニにて、私はレジ打ちのバイトをします!

 毎回ここに来るのは面倒で、普段は咲森区のコンビニで働いているんですが、荷物降ろしのバイトがある際にはこっちの賃金の方が高いのでこっちを選んでます。

 場所は偏差値71の高校の近くです!

 といっても、このバイト自体には見栄えも何も無いのですが。強いて言えば、制服姿の私が見れる事ぐらいでしょうか?

 まあ可愛いより真っ先に来るひんそ〜な身体なんて誰得でも無いのですが。


 お客さんが来るたびに「いらっしゃいませ〜」って言って、お会計になったらテンプレ構文を言って、たまに商品の陳列を手伝って――多分世界で最もVanitas vanitatum虚しいなバイトなんじゃないですかね。

 荷物降ろしより安い時給1000円以上しかないバイトなんて覚えておく価値もないですよっ!


 まあそれは閑話休題どうでもいいとして、特に見どころも無く、かといって手抜きもせず、今日のバイトは全て終了しました!

 気がついたらすっかり夕方ですね。 


 ついでにコンビニで弁当やいつもの銀色の缶も買って、私はとっとと帰ります!

 疲れた日には健康な食事と不健康なエチルアルコールですねっ!

 今日も1日お疲れ様でしたぁ!

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