遭遇
心臓が銅鑼のように打つ。手が冷たくなって指先がびりびりしはじめた。俺はライトを襲撃者へ向けた。光を乱反射する白い皮。黒色の目と驚くほど強いコントラストを描いている。
スクィディオ!
俺はスケートを逆回転させて、ヤツから距離を取った。全身が視界に入る。やっぱりそうだ。直立歩行の軟体動物。顔は戯画化した人間のそれだ。だが首がなく、とんがった頭から胴体へ滑らかなラインでつながっている。ぶよぶよした腕と脚。そして背中から、何に使うのかよくわからん触手のようなものが多数。
痛いほど心拍数が上がっている中で、俺はミスをした。すぐそばが壁だってことを忘れてたんだ。背中に衝撃を受けてようやく気づく始末だ。
頭の中心が熱くなってきた。なつかしい匂いがする。牧草の匂いだ。インプラントプラグと海馬を損傷したかもしれない。
スクィディオは床を滑って俺に急接近する。俺は磁気スケートをオフにした。垂直にそそり立つ壁へ足裏をくっつけてオン。ローラーが甲高い音を立てる。
そこまではうまくいった。
だがクソッ、ローラーが空回りしちまった。殺人者の目の前でふたつもミスをする間抜けがどこにいるんだ。
俺は胴体をつかまれて壁から引きはがされた。さっきまで床だったところへ思いきり叩きつけられる。
走馬灯が見えた。両親の顔、暮らしていた家がフラッシュバックする。
目の前でライトを点けられたみたいに、視界が急に白くなった。と思えば急に消える。部分的に灰色になり、灰色が流れて赤黒い模様を残した。本格的にインプラントを痛めたらしい。
ノイズまみれの暗闇で、俺は
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