不明な船

 おっかなびっくり、俺はファイターから足を踏み出した。股関節と膝関節がきしむのを感じる。磁気スケートはスムーズに床へ吸い付いた。ここがなんなのか知らんが、人間の技術で造られてるのは間違いない。

 内部は驚くほど宙母キャリアに似ていた。格納庫らしき四つの面、前側の面に開いた発進口と後ろ側の進入口。鏡の光沢を放つファイターまでずらりと並んでいやがる。


〈ここは宙母キャリアか?〉


 後ろ側の面はすぼまってすり鉢状になっていて、真ん中あたりに並ぶハッチまで滑っていけるようになっている。これも宙母キャリアと同じだ。ハッチの向こうは廊下だろうから、その奥になにがあるのか見てこないといけない。


不明アンノ


 やや遅れて返事があった。ミー・トゥーにすりゃ百万秒も黙ってたことになるんだろうが、まあいい。こいつにもわからんことはある。

 ふいに視界が奪われ、俺はのけぞった。


〈なんだ? どうした?〉

不明アンノ


 役に立たんやつだな。照明が落ちたのか? こんな密閉された船で電源喪失なんて悪夢だ。空気循環機が止まったら死にかねない。俺は船外活動服スーツから酸素を供給されてるが、それだっていつまでも持つわけじゃない。


〈帰還を提案。極度の危険〉


 でもそれじゃ、救難信号を送ってきたやつを見殺しにするってことじゃねえか。そんなの人殺しと同じだ。スクィディオを殺すのとは訳が違うんだ。


〈いや、このまま進む。ライトを点けてくれ〉

了解ラージャ


 ヘルメットのライトがためらいがちに点き、足下を照らした。ハッチを目指して滑り出す。


〈近くに情報表示板ディスプはあるか?〉

否定デナイ


 仕方ねえ、自力で探るしかないか。手首のレーザー銃アッシャーを手探りで確かめた。

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