救難信号

〈どういうことだ、救難信号ってのは?〉

〈五秒前、レーザーリンクを確立。救難信号を受信〉


 なんだと?

 俺は身体とシートを視界から消して、電子の星空へ飛びこんだ。カラフルなドットが散りばめられた中を下降、見回り範囲をズームする。凡例によれば緑が味方、赤が敵。青は民間、現在地は白。星は緑と赤と白が一個ずつだ。緑は俺の乗ってたキャリアだけ。赤は俺が撃破したやつだけ(非活性デアクティベーションのマークつき)。誰もいないじゃねえか。


〈説明。まず受信内容の確認が必要。受信内容を確認?〉

〈頼む〉


 脳髄にひゅうひゅう、ざあざあとノイズが染みこみはじめた。土砂降りの雨が叩きつける小屋に閉じこめられてるみたいだ。プツプツと不規則に静寂が入りこんでは、また再開する。なんだこいつは?


〈ただのノイズじゃないのか? 壊れたノードとリンクしちまったんじゃないのか〉

否定ネガト。統計分析の結果では意味内容を含む可能性大。現在解読作業中〉


 ノイズが消えた。


〈これがなんで救難信号だってわかったんだ?〉

〈モールス。信号は断続的。継続時間が明確にSOSを示す〉


 俺は絶句した(もともと口は使ってないんだが)。

 たっぷり五秒考えて、こう伝える。


〈仕方ねえ。助けに行こう。あと宙母キャリアに連絡しといてくれ。応援が来るまではだいぶかかるから、俺だけで行くって〉

了解ラージャ

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