009話 「襲撃者・後編っ!」

ブラッディがレイさんに向かってレイピアを振った瞬間、同時に二つの場所で

剣と剣がぶつかる音が響いた。


「ルシア様! このレイムンドが来たからにはもう大丈……なんか力強いぞっ!?」


「あれぇ? なんであんたここに居んの?」


レイさんとブラッディのすぐ真横にある壁が破壊されたかと思えばブラッディのレイピアをロングソードで受け止める変 態レイムンドとヘブンと対峙しているアーリウスお兄様が居た。


「お前なんだっけ?」


「アーリウス=リィ=ウィリウスだよ。そちらこそなんて言うんだい」


アリーウスお兄様とヘブン、二人とも睨み合いながら様子を伺っているようである。


「俺はヘブンだ。おめえこそ短剣だけど良いのか? この俺様が振り回す大剣には隙はないぜ」


「短剣はリーチは短いが、懐に入れば絶大な攻撃力があるんだ。リーチの長い大剣とリーチの短い短剣、さてどちらが強いだろうね」


するとアーリウスお兄様は短剣に火を纏わせる。その炎は次第に赤から青へと色を変えていく。


「短剣に炎を纏わせるなんてバカか? まあ良い、こちらから攻撃させてもらうぜぇ!」


相変わらずヘブンは早い。その馬鹿高い機動力と大剣のリーチの長さと攻撃力を活かしてさっきの警備兵は一人も近づけなかった。まあ、みんなやられちゃったけど……


一方、レイムンドは


「おらおらおらぁあ!! さっさと折れやがれえぇえ!」


「ちょっ!?、そんなに休みもなく攻撃してると、疲れちゃうよぉ!?」


「だから早く仕留めたいのさぁあ! おらぁ“っ!!」


すると変態の声が聞こえる。ブラッディとレイムンド、若干だがレイムンドが押しているように見えた。

そしてさらにレイムンドは純粋な身体能力と剣術だけで戦っている。

ーーなんか強いぞ?


「……やはり私より、レイムンドさんの方が強いですね」


横にいた満身創痍だったはずのレイさんが立ち上がる。


「レイムンドさんっ! 私も参戦します!」


「っ!? どうもレイさん!」


するとレイさんはギリ目で追える速度で戦いの中に突っ込んでいった。さっきレイさんの戦いは見たけど、あれでもレイムンドが強いとなると魔力弾を打ち込んだ時に泡を吹いていた変態はなんだったのだろうと思った。


「ちょっとぉ、卑怯よぉ!」


レイムンドさんが正面からぶつかり、レイさんが横から奇襲攻撃をお見舞いする。


「元第三騎士団、団長のレイムンド=ラプス=シートンに

 元特Aランクの冒険者レイ=カステル。

 流石にブラッディには荷が重い。一回下がれ」


「ボスっ! でも」


「大丈夫だ、下がれ」


すると仮面の男の声によってブラッディが戦線を離脱する。レイさんが追撃しようとしたところでレイムンドがとめた。

と言うかレイムンドさん、騎士団の団長だったの!? レイさん冒険者ってまじ!?


「そんなに避けていると攻撃できねえじゃねえかっ?」


ブラッディの戦いに夢中だったが、アーリウスお兄様はヘブンの攻撃を避けながら観察しているように見える。何か良い策でもあるかもしれない。


その時だ、一気にアーリウスお兄様の動きが変わる。まるでこの時を待っていたかのような目だ。

次の瞬間お兄様はヘブンの懐に潜り短剣をお腹に突き刺していた。


「お前の負けだ。ヘブン」


そう言うと一気に炎を纏っていた剣先が爆発的に燃え上がる。その炎はヘブンを包み込んでいた。


「俺の僅かな隙を見つけて腹に短剣をブッ刺したところまでは評価できるが、関心しねえな」


すると一気に身体にまとわりついていた炎が消えた。


「嘘、だろ?」


ヘブンはゆっくりと短剣を腹から抜こうとする。するとブラッディを睨んでいたレイさんが間一発で【魔縄拘束リストレイント】を発動させた。


「こんなもんやったって、すぐに【反抗レジスト】で…ってあれ?」


「今回は【反抗レジスト】できないようね」


「ブラッディ、帰るぞ」


するとずっと後ろでヘブンの戦いを見ていた仮面の男がいきなり白旗宣言と言っても過言じゃない事を言い出した。


「っ!? え、いいのぉ?」


同じようにヘブンを見ていたブラッディが驚いたように返事を返した。いや、驚いているっ!


「ぼ、ボス? お、置いてくんすか?」


「ああ、お前なら大丈夫だろ。 じゃあ行くぞ」


「待てぇぇ“えええええっ!!!」


ヘブンが目で仮面の男を追ったが、ブラッディと魔法陣の中に入るとピカピカと効果音が付きそうな感じで消えていった。【転移魔法】だろうか?


レイムンドが仮面の男とブラッディを追いかけたが無意味だったようだ。するとレイさんが【魔縄拘束リストレイント】で拘束されているヘブンに歩み寄る。


「おやおや、仲間に見捨てられたようですね?」


「おい! 煽ってんじゃねえぞクソババア!」


するとレイさんの周りの空気が変わった。いつもは呑気そうなレイムンドの表情筋がおかしい事になっている。


「あ、いや……」





こうして襲撃者の襲来は幕を閉じた。あの後聞いた話によると本館には三下の様な黒い服を着た集団が数百人余りいたそうで、アーリウスお兄様やレイムンドがこちらに来るのが遅れたらしい。


本館にもヘブン達のようなものが居たらしく、お父様の護衛がかなりヤられたそうだ。


特に貴族たちに被害はなく、護衛以外などには負傷者は居ないものの、この事件は領地や他の貴族達にも広がり混乱を見せている。


捕らえた三下百名ほどは、王都に送られ尋問が始まっているらしい。

ヘブンはと言うとうちのでレイムンドが尋問を行うそうだ。大丈夫だろうか?


その事を参謀ルークさんから聞き、ひと段落終えると俺はすぐにベッドに直行した。ただしレイさん率いる強化された護衛隊で。


レイムンドもこの扉の先にいると思うと背筋が凍えるが、疲れと眠気のダブルコンボで意識を手放した。


ーーーーーーーーー

短編っぽいの書いたんで興味あれば

https://kakuyomu.jp/my/works/16818093083857253116/episodes/16818093083857291431

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

巻き込まれ体質の俺、公爵家の六女に転生したのでのんびり生きたいっ! 星色 @nibunnoitinorihuzinnakakuritu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ