4:繋がりを得たい奴隷の話
青年と傷
青年は元より、その血の為に多くの魔族から嫌われていました。
そのため、正体が露になる度に姿を隠し、ほとぼりが冷めるまでひとりで山や森に身を隠していました。
しかし、今回露呈したのは観光客の多い花園の国。しかも国民たちはその恨みから、総力を上げて青年のことを晒しあげています。
青年の事は広く知れ渡り、向かう国々で多くの冷遇を受けることになりました。
門前払いはまだいい方で、道中に罠を貼ったり迎撃を繰り返されたり、毒を盛られかけたことすらありました。
青年は災害の魔族の力を引いていたので、その多くを乗り越えます。
しかし、全く傷つかないわけではありません。
どんな血をひこうが、青年も人並みに傷を負います。
むしろ、治癒にかかる時間は他の魔族より多くかかり、これまでにも数多くの血を流し続けてきました。
段々ボロボロになっていく青年と共に、3等級の奴隷も随分消耗していきます。
しかし、どれだけ辛い目にあっても3等級の奴隷は青年から離れませんでした。
獣や敵意から何度も何度も逃れ、太刀打ちし、噂が途切れたのは泉の国に訪れた頃でした。
「随分と遠くに来たね。あそこに見えるのが泉の国。温泉が有名な観光地だよ」
「……観光地、ですか」
青年は3等級の奴隷から治療を受けてはいましたが、その身にまだ多くの怪我が残っています。
3等級の奴隷は同じ観光地である花園の国での出来事を忘れることが出来ず、その瞳は恐怖で揺らぎました。
「他人に会うのは、怖いね」
「……はい」
3等級の奴隷は素直に頷きます。
「しかし、魔族はどうしてもひとりでは生きていけないものなのだよ。恐ろしくはあるけども、なんとか関わっていかないとね」
「そう、ですね……」
調度品も食料も、もう殆ど尽きかけています。
青年の出血は止まる度に新たに傷を刻まれ、今もまた別の箇所からその魔力を示します。
「血液を見たり匂うだけで災害の魔族の血を引くと理解できるものは随分稀たが、万が一のことを考えると良くないね。
せめて出血が収まってから、国の中に入ろうか」
「お供します」
3等級の奴隷は恐怖を隠しながらも静かに頷きます。
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