2:3等級になった奴隷の話

青年と等級の国

 青年と元肉は、ふたりで旅を続けていました。

 魔界の旅は並半かな力では越えられません。狩りをする中も狩られそうになり、事故や事件に巻き込まれかけたりと幾度となく死地を超える場面が多々ありました。


 そんな中、厳しい季節がやってきます。雪がちらつき始める前、青年が元肉に言いました。


「そろそろ、どこかの国で越冬しよう。流石に野宿は堪える頃だ」

「助かります」


 元肉はガタガタ震えながら、質素な上着の中で縮こまります。


「アテはありますか、ご主人様」

「そうだね。この辺だと等級の国が1番近い。知った場所だ、道もわかる」


 青年と元肉は荷車を押しながら、目的地を目指します。

 等級の国は、その名の通り等級制度が行き渡っている国です。

 場所や店によっても何等級以下は立ち入り不可など、細かく区切られています。


「等級証を見せてもらおう」


 宿を取ろうとした場所で、青年は首から下がる宝石を見せます。


「剣士の1級。結構」


 門番は青年を通します。


「等級証を見せてもらおう」


 元肉は狼狽えます。


「奴隷にも等級を求めるのかい?」

「当たり前だろう。主人がマトモでも、奴隷の躾がなってなければ、こちらとしては迷惑だ」


 元肉に等級はありません。青年も宿に泊まることはできず、ふたりが揃って泊まれたのは、ぼろぼろの荒屋だけでした。


「申し訳ございません、ご主人様」

「こちらも無知で悪かった。元々奴隷を持つのは初めてだから、勝手がわからなかった」


 しかし、階級がない元肉をつれてはあらゆる店に入店できず、元肉をひとり置いて出るには荒屋は危険な場所に存在しています。


「その奴隷にも、等級試験を受けさせればいいでしょう」


 困り果てた青年と元肉に、宿屋の主人が伝えます。


「奴隷の等級試験は、随時受け付けております。最も、その奴隷程度では最低である3等級すら得られないでしょうが」


 宿屋の主人は元肉を見て鼻で笑いました。


「随分なことを言う。失言ついでにどうすれば等級を得られるまでになるか、聞こうじゃないか」


 青年はしょんぼりする元肉を横に睨みます。


「簡単で御座います。奴隷に教育をさせれば良いだけです。最終的に認定試験もそのまま受けれる、便利な奴隷学校がございますから、向かわせてはどうでしょう」


 青年は宿屋の主人から案内が書かれた羊皮紙を受け取ります。


「…………安くは無い」

「ど、独学でも、頑張ります」

「いや、これもいい経験になるだろう。

 足らない額ではないんだ。どうせ過ごす日々なのだから、君も何かを得てきてごらん」


 青年にそう言われて、元肉はこくりと頷きました。

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