青年と肉質検査
ふたりは時間と会話を重ね、それなりの魔族は肉として少しずつ熟成していきます。
やがて、この国に来て2ヶ月が経ちました。
青年たちには来月の納税に向け、肉質検査を受けることとなりました。
「ふむ、この顔なら国王も気に入るだろう。色欲の肉に認定する」
そう言われて喜ぶ国民もいれば、買った魔族が食欲の肉にしかなれず、顔を曇らせる国民もいます。
青年は少しの緊張と不安を抱えながら、それなりの魔族と順番を待ちます。
「笑顔を作るんだ。お前には、可愛げがある。
笑えばそれなりに見える。自信を持って、検査を受けるんだよ」
「はい。なんとしてでも、色欲の肉として認定されます」
それなりの魔族の順番が来ました。
精一杯笑顔を作ったり、愛想を振りまいて役人にアピールします。
「ああ、だめだだめだ。これはどうやっても食欲の肉にしかならないよ」
役人が横に首を振る中、青年が反論します。
「そんな、よく見てくれ。美人とは言えないかもしれないが、可愛らしさがあるだろう」
「お前の目は節穴か?どう見ても国王が喜ぶとは思えまい」
役人は正気かと、呆れた目で見ています。
それなりの魔族は、食欲の肉としてのタグをつけられます。
青年にはそれを止めることができません。
「落ち込むな、同胞よ。肉質検査は、納品の際に行われる。
それまでにこの肉をよりよく育てれば、最長2年は過ごせるさ」
役人は青年に伝えますが、青年は言葉を返せません。
食欲の肉とされた魔族は俯きながら、静かに涙を流します。青年はそれにも言葉を掛けれません。
傍では色欲の肉になれなかった魔族に罵声を浴びせる国民もいました。買い物を間違えたと嘆く国民も少なくありません。
青年はそれらを見ることも出来ず、食欲の肉とされた魔族をつれて、帰路に着きました。
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