青年と魔族販売店
「いらっしゃい、いらっしゃい。只今セールの真っ最中だよ」
恰幅の良い店員から、青年は何人かの魔族を見せられました。
しかし美しい魔族や恰幅の良い魔族には、手持ちを空にする程の値段が書かれています。
「存外、高いね。いちばん安いのはどれだい?」
「お値打ち価格なのは、こちらだよ」
店員は奥の方にある檻の、さらに向こう側を指さしました。
中に転がっていたのは、何とも貧相な体の魔族です。お世辞にも美人とは言えず、初めに見せられた魔族より随分と目劣りします。
「これでも納税に適するかい?」
「これならはした肉として1ヶ月程度の家宅所有を許されましょう」
1ヶ月。あまりにも短い期間に、青年は眉をひそめます。
「なに、育てればいいんですよ。
家を所有したてなら、納税までの猶予は3ヶ月あります。
それまでに、これを育てたらいかがでしょう」
店員の提案に、青年は少し考えます。
しかし、今の青年に美人な魔族や恰幅のよい魔族は買えません。3ヶ月働いても、届くとは思えない値段です。
となれば、この貧相な魔族を育てるほか、道はない。げんなりする未来ですが、背に腹は変えられませんでした。
「買った」
「毎度あり」
店員は貧相な魔族を青年に渡します。
貧相な魔族は曲がった背中でおずおずと挨拶をしてきます。
「ありがとうございます、ご主人様。精一杯育ちます」
「結構」
ボロ布を纏った貧相な魔族は頭を垂れ、青年に付き従いました。
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