男の料理

「長谷川が好きな料理って何かあるか?」


俺は台所で料理をしてくれている長谷川に声を掛けた。

長谷川は料理の手を止め、キョトンとしている。


「先輩、突然どうしたんですか?」


「いや、いつも料理をしてくれているから、たまには俺も料理をしようと思ってな」


「……先輩が料理をしようとしている? 明日は雪が降りそうですね」


何という言われようだろうか。

俺が目を細めると長谷川は慌てて口を開いた。


「す、すみません。冗談ですよ。とにかく、それで私に好きな料理を聞いてくれたんですね?」


長谷川の言葉に俺は頷く。


「うーん、そうですね。生姜焼きとかどうですか?」


「いやいや、『どうですか?』、じゃなくて、長谷川が食べたい物を聞いているんだけど」


「いやいやはこっちの台詞ですよ。先輩は普段料理しないんですから簡単に作れる物にしましょうよ」


「まぁ、確かに失敗した物を食べさせる訳にはいかないからな。分かった次は俺が生姜焼きを作るよ」


俺の言葉に長谷川は微笑んだ。


「ありがとうございます。楽しみにしていますね?」



そして数日後、いつもとは違い、長谷川は椅子に座り、長谷川は椅子に座ってこちらを見ていた。

俺はスマートフォンを操作し、保存をしていた生姜焼きのレシピを表示させた。

簡単に作れるレシピを調べた為、今回は焼いて味付けをするだけだ。


俺はコンロの上にフライパンを置くと油を引いて火を点けた。

フライパンが温まってきたら、豚肉を投入。

菜箸で肉を引っ繰り返しながら肉を焼いていく。

ある程度、焼けてきたら、味付けだ。

俺はレシピを見た。

醤油が大匙二と書いてある。

俺は気持ち多めに醤油を入れた。


「混ぜないで直接入れた!? しかも、分量を計っていない!?」


長谷川が何かを言っているが、料理はスピード勝負だ。

みりん、酒と入れていき、砂糖は小匙一と書いてあったので、気持ち少な目に入れる。

生姜チューブを適当に入れると菜箸で混ぜ合わせた。

肉に赤みが残っていない事を確認し、皿に移した。

炊いておいた米を茶碗によそって、長谷川の元へ運んだ。


「長谷川、完成したぞ」


「分量を守っていないから大分茶色いですけど、良い匂いがしますね」


俺は椅子に座ると、長谷川と一緒に手を合わせ、「いただきます」と言うと、食事を開始した。


生姜焼きを一枚、口に入れると噛めば噛む程味が染み出して来てご飯が進む。


「我ながら、美味しく出来た気がする。長谷川はどうだ?」


「確かに味は美味しいです。でも、濃すぎます! 今後、先輩は必ず計量スプーンを使って料理をして下さい!」


その後は、分量を守る大切さを知る授業が始まるのだった。

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