楽しみにしていますね?
長谷川に先導されながら、俺達はパレードが見える位置に移動した。
長谷川に持って来るようお願いされていたレジャーシートを敷けば、準備は完了、後は待つだけだ。
「二人共、何か食べ物や飲み物はいるか? 買ってくるぞ?」
俺が二人に伝えると、長谷川が慌てて立ち上がった。
「東山先輩、私も手伝いますよ」
「じゃあ、私は場所取りをしておくね」という中島に見送られ、俺と長谷川は歩き出した。
少し進んだ所で俺は長谷川に声を掛けた。
「長谷川、改めてさっきはありがとう。男として情け無い姿を見せてしまったけど、助かったよ」
俺の言葉を聞いて長谷川は首を静かに横に振った。
「全然情けなくなんてなかったですよ。でも、無理して乗らなくても良かったんですよ?」
「小さい頃は大丈夫だったから、楽しみにしていた位だったんだけど、アトラクションを前にして急に駄目になったんだ」
俺が言うと長谷川は心配そうな顔になる。
「そうだったんですね。そうしたら、今回の事で苦手になってしまいましたか?」
「いや、好きなままだよ。長谷川が手を握ってくれていたお陰だな」
「それなら良かったです。何度も手を繋ぎますから、また一緒に乗りましょうね」と言って、僕を見て、長谷川は微笑んだ。
飲み物や食べ物を買って中島の所へ戻ると遠くから音楽が聞こえてきた。
どうやらパレードが始まったみたいだ。
少し待っていると大きな乗り物に乗ったキャラクター達が姿を表した。
「あっ、東山先輩、チュー太郎が手を振ってくれてますよ!」
長谷川は大興奮でキャラクター達に手を振っている。
その様子を見て、こういうものは楽しんだ者勝ちだよな、と思い、長谷川と中島と同じ様に俺も大きく手を振った。
パレードが終わった後は、再びアトラクションに乗り、結局閉園時間まで遊び倒した。
最寄駅が違う中島とは途中で別れ、今、俺は長谷川を家に送る為に歩いている途中だった。
「いやー、沢山遊びましたね」
「そうだな、流石に疲れたよ」
「ジェットコースターも沢山乗りましたもんね」
長谷川の言う通り、パレードが終わった後もジェットコースター系のアトラクションに幾つか乗った。
その度に長谷川は手を繋いでくれた。
まぁ、途中で俺と長谷川が手を繋いでいる事に気付いた中島に散々からかわれたが、お陰で怖くなる事無く、アトラクションを楽しむ事が出来た。
「長谷川のお陰で楽しめたよ、ありがとう」
「先輩のお役に立てて良かったです」
「次は水族館だな。調べておくから楽しみにしててくれ」
「ありがとうございます。楽しみにしていますね。そうしたら、水族館に行く前に掃除を頑張らないとですね」
長谷川の言葉に俺はゲンナリする。
「すっかり忘れていたよ」
「私が手伝うから大丈夫ですよ!」
長谷川はそう言って笑うのだった。
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