先輩、可愛いですか?

次の週の土曜日。

俺と長谷川、中島の三人はドリームランドの入り口前で開場の時を待っていた。

ドリームランドとは世界でも有名なキャラクターがいて、ジェットコースター等の乗り物が多数ある大型遊園地だ。


「私、来るの久しぶりなので、すごく楽しみです!」


「はしゃぎ過ぎて疲れないように気をつけないとね」


興奮状態の長谷川に微笑みながら伝える中島。

こうして見ていると姉妹のようだなと感じていると、開場を知らせるアナウンスが流れてきた。


「あっ、入れるみたいですよ。東山先輩、中島先輩、行きましょう!」


「急がなくても逃げないぞー」


急かしてくる長谷川にのんびりと言葉を返しながら俺達は入場をした。


「まずどうする?」


俺がそう聞くと長谷川が真っ先に手を挙げた。


「カチューシャを買いに行きましょう!」


「渚ちゃんは可愛いからともかく、私は年齢的にも恥ずかしいかも」


「いや、問題なのはどう考えても俺だろ。中島は可愛いし、似合うから問題無いって」


俺がそう言うと中島は顔を真っ赤にさせる。


「きゅ、急に何言っているの! 驚かせないでよ!」


「何言っているのって、本当の事を言っているだけだろ。中島が駄目だったら俺はどうなるんだよ……」


そんな俺と中島のやり取りを見て、長谷川が頬を膨らませる。


「ほら、そこ! イチャイチャしない! 中島先輩は可愛いから問題ないに決まっていますし、園内では男性も付けているんですから東山先輩も問題無いです!」


「いや、でも勿体無くはないか? 今日だけしか使わないだろ?」


「また来ましょうよ!」


長谷川のその一言に中島が優しく微笑む。


「そうね。それなら勿体無くはないわね」


長谷川がまた来たいと言ってくれた事が嬉しく、俺は頷くとショップへ向かった。


「色々な種類があるんだな」


店内に入ると思っていた以上の種類があった。

カチューシャだけでなく、被り物もあった。


「東山先輩、どうですか?」


声のした方へ視線を移すと耳にリボンがついているチュー子ちゃんのカチューシャを頭につけている長谷川がいた。


「可愛い! やっぱり似合うね」


中島がすぐさま褒めているのを見て、俺も褒めようと口を開く。


「似合ってると思うぞ」


しかし、褒めた俺の言葉に長谷川は不服そうな顔をしている。


「……可愛いくないですか?」


「え?」


「さっき中島先輩には可愛いって言ったのに私には言ってくれないんですか?」


「あ、いや。似合っているというのは、可愛いって意味も含まれているから…… その、可愛いと思う」


「最初からそう言ってくれれば良いんです!」


口調は怒っていたがその表情は笑顔で、俺は取り敢えず長谷川が機嫌を直してくれて良かったと思ったのだった。

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