後輩と同級生と

「ここ数日は授業が終わるとすぐ帰ってたのに、急にどうしたの?」


長谷川と出掛ける約束をした次の日、一晩考えてもまったく案が浮かばなかった僕はこういう事を気楽に相談出来る友人である中島小百合に相談する事した。

中島とは同学年で、さらにバイト先が同じなのでよく話す仲だ。


「実は出掛けるプランを組む事になってな。でも、全然案が浮かばなくて困っていたんだ。近場とかでどこか良い場所を知ってたりしないか?」


中島は何かに納得をした顔をして、手の平をパチンと合わせた。


「要は最近よく一緒に帰っている可愛らしい女子とのデートプランの案が欲しいと」


「なんで知ってんだよ。それに別にデートじゃないって」


中島が知っていた事に驚きつつも、デートとはっきり言われると恥ずかしいので否定をする。


「初々しい反応だね〜 別に一緒にいるところを見ただけだよ。同じ大学にかよっているのだからありえるでしょ」


そう言うと中島は目を輝かせる。


「それで二人はどこで知り合ったの? 東山からのナンパ?」


「違う違う! 高校の部活の時の後輩だよ」


すると、中島はニッコリ笑顔。


「部活の後輩とデートか〜 良いねぇ、青春だねぇ〜」


「だから、デートじゃないって。それに言い方がおばあちゃんみたいだぞ」


「そんな事を言っていると協力しないぞー」


それを言われると何も言い返せなくなる。


「悪かったよ。頼むから協力してくれ」


そんな僕の様子に満足したのか、うんうんと頷く中島。


「やっぱり、相手の子の趣味とか興味がある事を取り入れると嬉しいと思うけどね。その子は何が好きなの?」


「……何が好きなんだろうな?」


強いて言うなら料理だろうか?

しかし、料理とデートも結びつく気がしない。

そんな僕を中島は呆れた様子で見ている。


「部活が一緒だったんだよね。話の中に趣味の話は出なかった?」


「うーん、基本くだらない話ばかりしてたからな。最近料理が趣味だと知ったけど……」


「そうか……」と中島は考えていると、突然何かに気付いた表情になると、「ねぇ、その子の名前はなんて言うの?」と僕に突然聞いてきた。


僕は戸惑いながら「長谷川だけど」と答えると「下の名前は?」とさらに質問が返ってきた。


「渚だけど」と答えると中島は突然立ち上がった。


「渚ちゃん! 東山が呼んでいるからおいで!」


つられて中島と同じ方向を見るとそこには突然名前を呼ばれ戸惑っている長谷川がいた。

しかし、僕の存在に気付くと安心したように息を吐くとこちらに近付いてきた。


「こんにちは、渚ちゃん。私は東山の友達で中島小百合っていいます。よろしくね!」


中島が自己紹介をすると長谷川はぺこりと頭を下げた。


「私は長谷川渚といいます。東山先輩とは部活が一緒でお世話になっていました。よろしくお願いします、中島先輩!」


中島は長谷川の事を孫でも見るような眼差しで見ている。


「渚ちゃんは真面目で可愛いねぇ。東山には勿体無いねぇ」


「中島、またお婆ちゃんみたいになっているぞ」


僕のそほ指摘に反応したのは何故か長谷川だった。

僕を見る目が厳しくなる。


「東山先輩は他の人にもそのような事を言ってるんですか?」


「何か言われたの? 渚ちゃん」


「私はおばさんと言われました」


「そうは言ってないだろ」という僕の言葉を無視して中島と長谷川は「えー、そんな事を言われたの?」や「デリカシーが足りないですよね」と言いたい放題だった。


この二人の相手は疲れるぞと僕は天を仰ぐのだった。

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