後輩の手料理ご飯
マンションを出た後、僕と長谷川は早足で長谷川のマンションに向かった。
理由は長谷川の萌え袖姿をなるべく人に見られないようにする為だ。
「……すごい綺麗にしてるんだな」
長谷川が部屋のドアを開けた瞬間に見えた部屋の様子に僕は思わず呟いていた。
「先輩の部屋が散らかっているだけですよ。このくらい普通ですよ」
長谷川は呆れた口調で言うとリビングへ繋がる扉を開けた。
「今からすぐに作りますので先輩は座って待っていて下さい」
長谷川はそう言うと着替えをした後、キッチンに向かった。
僕は椅子に腰掛けると部屋を見回した。
物があまり見られない。
きちんと収納しているのだろう。
清潔感溢れるシンプルな部屋だ。
それと比べると自分の部屋の散らかり具合が恥ずかしくなる。
僕は整理整頓を頑張ろうと静かに誓った。
スマホを弄ったり、長谷川と話をしていると良い匂いが漂ってきた。
「もう少しで出来ますよ」と言った長谷川に「何か手伝う事はある?」と言葉を返す。
「でしたら、テーブルを拭いといてもらえますか?」
そう言いながら差し出された布巾を手に取りテーブルを拭くと長谷川が食器を持ってこちらにやって来た。
「オムライスにしました〜」
置かれたオムライスはとても美味しそうだ。
食欲を刺激される。
準備が整い、僕と長谷川は椅子に座ると「いただきます」と言って食事を始めた。
オムライスを一口食べると半熟のオムライスが口の中でとろけた。
「凄い美味しい! 長谷川が料理上手なんて知らなかったよ」
僕が褒めると長谷川ははにかみながら微笑んだ。
「ありがとうございます。高校の頃は料理を振る舞う機会がありませんでしたからね。母の料理の手伝いをしていたので多少は出来るんです」
「毎日自炊してるの?」
「そうですね、基本毎日料理しています。料理好きなんですよね」
「こんな美味しいご飯を作って、綺麗好きなら、すぐにお嫁に行けるな。何ならすぐに来て欲しいくらいだよ」
「じょ、冗談を言わないで下さい。自分が家事出来ないからやってもらいたいだけですよね?」
長谷川の鋭い視線が僕に向けられるとその迫力に思わず視線を逸らしてしまう。
「まぁ、少しはその気持ちもあるな」
僕の言葉を聞いた長谷川は呆れたように溜息をついた。
「それにそんな事を今のご時世で言ったら、セクハラですよ」
「うっ、気を付けます」
「そうだ、先輩に借りた服は洗濯してお返ししますね」
「そのまま持って帰るから気にしなくていいぞ」
僕がそう言うと顔を赤くして俯いた。
「その、一度袖を通した服を持って帰られるのは、何となく恥ずかしいので、洗濯してお返しします」
長谷川が恥ずかしがっていると僕もなんだか恥ずかしくなってくる。
「分かった。返すのはいつでも良いから」
「ありがとうございます」
その後、二人でオムライスを食べ進め、料理をしてくれたお礼を込めて皿は僕が洗った。
時刻は午後九時。
そろそろお暇した方が良いだろう。
「長谷川、今日は色々ありがとう。そろそろ帰るよ」
「分かりました。先輩、お皿洗ってくれてありがとうございます」
「オムライスを作ってくれたお礼だから気にしないでくれ」
「そうだ、先輩。明日も掃除をしに行きますね」
「そんな連続だと悪いから大丈夫だぞ?」
「明後日が燃えるゴミの日なんです。多分、先輩のマンションも一緒だと思いますから、少しでもまとめて捨てましょう」
力強く言い切る長谷川の言葉で僕の明日の予定が決まった。
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