第57話
年の瀬が近くなる中で、僕は脚本の仕事が決まったことで早速執筆に追われるのと同時に、個人事業開業に向けての勉強や準備を進めていた。僕が映画の脚本を担当するということは、学校のブログでも大々的に紹介され、同級生や後輩たちの中はブログを見た者も多数いたほどだった。
その頃、後輩たちは卒業進級制作展に向けて実行委員会が立ち上がり、準備に追われていた。僕も含め、同級生の中には1年生時と2年生時と2回に渡って実行委員会をしてきた学生もおり、思えば専攻が違って授業すら被ることない同級生と親交を深めることができたのは、学校内における各種イベントで実行委員会を務めてきたからであろう。
実行委員会はやらないにせよ、せっかくならば当日のイベントの手伝いでもできたら良いと同級生とも話しており、実行委員会の学生と親交のあるゲームプランナー専攻の友人・ATが提案してくれることになった。
卒業進級制作展では、今年も編集長を務めた歴史雑誌と、学生生活最後の書下ろしシナリオ本の2点を出すことは決まっており、映画脚本やフリーペーパーの執筆と同時進行で編集作業にも追われていた。YMが卒業制作で、ドキュメンタリー要素を入れた短編ドラマを作ると言い出し、僕に出演して欲しいとオファーをしてきたのは、ちょうどその頃。
脚本や撮影、監督、編集、タイトルロゴなど全て一人でやると豪語したYMだったが、3日もしないうちに僕に「脚本を書いてください」とお願いをしてきた。YMとは入学当初から親交があり、アメリカ研修で街を散策し、恋愛相談にも乗り、家にも泊めてもらい、BBQもやったが、思えば一緒に作品を作ったことは一度もなかった。それに気づいたのは、脚本依頼を受けた時で、一度きりの作品になるのならばと、僕もYMも俄然エンジンがかかる。その後何度かの打ち合わせを重ね、年末ギリギリに脚本が完成し、年明けすぐには撮影という予定が決まった。
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