第53話

自習をするために、いつものパソコンのある教室に入ると、NMが自習をしていた。アメリカ研修で告白をされて以来の2人きりの空間である。学校に来る頻度が少なかったNMが、珍しく休みの日に登校していたので思わず尋ねると、卒業までの単位が足りないために補習扱いで自習をしているという。

2年生前期はほとんど姿を見せず、後期もたまに授業に顔を出す程度。自然消滅となった関係性が戻るわけがないとお互いに思っていたこともあってか、久しぶりの会話は素っ気ないものとなった。

数日が経ち、僕にとって最後の学園祭となった。学校新聞の記事執筆のために、僕は各出店ブースを回った。後輩たちが企画をしたコスプレ喫茶は人気を博し、YMやHMがロビー前で出店した焼鳥屋も繁盛。また、姉妹校のHAのもとを訪ねると、手作りケーキや焼き菓子の販売を行っており、さすがは専門的に学んでいるものだとその技術に驚かされた。

客兼取材として各所を訪ねて話を聞き、僕はそれをメモする。楽しく学園祭に臨む友人たちの姿を見て、自分も良い記事を書かなくては、と力が入った。


学園祭からまもなく、僕はYMやHMといった友人を誘い、家族ぐるみで行きつけだった居酒屋で食事をした。友人たちとの飲み会が積極的になったのは、この頃から。

以前、HMとは2人でこの店に来たのだが、YMが行きたいと言い出したので今回の食事会が決まったのだ。『上串』という、ねぎまを衣で揚げた名物に友人たちは舌鼓を打っていた。

数日が経ち、僕はいつものようにフリーペーパーの事務所へアルバイトに向かった。そこで社長から、フリーペーパーの執筆を主に担当していた社員さんが家庭の都合で退職することになったことを聞かされた。その社員さんの担当していた記事執筆や編集業務はどうなるのかと僕が尋ねると、社長は編集業務全般を僕にやってほしいと任命してきたことで、僕は思わず唖然となった。

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