第51話
ポートフォリオ制作に追われる春休みが続いていた中で、この日は年に1回の健康診断の日。男子が午前、女子は昼からというスケジュールなので、僕ら男子は朝食を抜くだけで済んだが、女子は時間的に昼食も食べられない状態だった。
ここが僕ららしいのかもしれないが、健康診断が終わった男子勢は、昼食のために学校近くのお好み焼き屋に行き、その写真を普段親交のある女性陣にLINEで一斉に送るという浅はかなは行動を起こした。案の定、女子の検査終了後、大目玉をくらった。
それから数日後、デザイン担当の講師の先生による『ポートフォリオ集中講座』という特別授業が行われた。現状のポートフォリオを先生ガ添削したり、学生同士付箋で気になるところに意見を貼ったりと、まさに建設的な意見が飛び交う時間だった。
3時間近くの講座終了後、僕はHNたちに誘われて、近くの居酒屋へ足を運んだ。まだアルコールに飲み慣れていない自分は梅酒をひたすら飲んでいたが、あるタイミングで突然、HNが透明な液体の入ったグラスを差し出した。「芋焼酎の水割り、飲んでみて」と突然進めてきたのだ。初めての焼酎だったが、飲んでみると意外と行ける。ついペースを早めに飲んでしまい、初めて『酔っ払う』という経験をしたのだが、友人たち曰く「オネエになっていた」とのこと。
3月下旬。デビュー活動に専念するために、オープンキャンパスの学生スタッフを卒業することにした僕にとって、最後のシフト日となった。姉妹校で親交のある後輩のHAや入学事務局の職員たちからは、卒業を残念がる声が上がっていた。僕自身も、卒業は名残惜しいものであった。
最後のシフトを終えて控え室に戻ると、近くにあるドーナツ屋の袋が置いてあった。「スタッフお疲れ様」というメッセージつきで差し入れをしてくれたのはHNだった。
名残惜しさを胸に、数日が経って新学期を迎え、僕にとって最後の1年が始まろうとしていた。
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