第50話
卒業進級制作展が無事に終わって間もなく、僕はバイト先で発行しているフリーペーパーの最新号を熟読していた。毎月1日と15日の2回発行で、モノクロの1枚ペラで両面印刷という体裁である。表面はインタビュー記事で、裏面はイベント情報などの連載が載っているが、今回の15日号からは新しく短編小説の連載がスタートした。その短編小説を書いたのは、他の誰でもない、僕である。
以前の編集会議で、「続きが気になる連載ものを掲載したら、固定の読者ファンが増えるのでは」と提案したことで、思いがけず若手営業マンを主人公にした1話完結の連載小説を書かせていただくことになった。それ以外の記事は、社長や学校の講師の先生からの添削を受けながら修正をする作業が続いていたが、連載小説は自分の好きなように書かせてもらえたので、気が楽であった。これも1つの実績になると思いながら、僕は『楽しく書く』という原点を忘れない気持ちで書き続けていた。
そんな実績も掲載するためのポートフォリオ制作にも余念がなく、約2ヶ月の長い春休みが始まっても、相変わらず僕は学校に入り浸る日々。そして、就活に向けて友人たちも動き出したり、キャリアセンターからも様々な求人案内の一斉メールが届くようになった。
前例のないポートフォリオ制作であったため、参考にできる資料がないのが大変であった。つい文章が多い内容になってしまい、「こんな長文読まない」「私なら最後まで見ない」など、友人たちのコメントも辛辣。
デッサンやCGを必須授業で受けていた友人たちは、色使いやレイアウトなどの構成がしっかりとしている。それに比べて僕のものと言えば、とりあえず3段組で文章を書き、メインタイトルにちょっと図形を使って工夫しているぐらいで、それこそ学校で配られるおたよりみたいな安っぽいデザインである。どこに工夫を凝らしていけば良いのか、ひたすら悩む日々が続いていった。
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