第45話

フリーペーパーの事務所を訪れた僕は、配布エリアがビジネス街であることから営業マンをターゲットにしたフリーペーパーであること、本業は企業の人材教育や採用支援を行うコンサルティング会社であることを社長から教えていただいた。本業がある中でのフリーペーパー事業は、配布も原則手渡しで、記事執筆も担当社員の方が1人で行っているため、人手が足りないのが現状であることも聞かされた。そこで社長たちは、僕にアルバイトとしてフリーペーパー制作を手伝ってもらうのはどうかと提案。学校と相談すると言って、僕は事務所を後にした。

季節はちょうどハロウィン真っ只中で、10月31日は学校内もハロウィン一色。僕や友人たちは、お菓子作りだけでは飽き足らず、高校時代の制服着用という仮装付き。こういう時、何故か不思議とお菓子作りに力を入れるのは男子で、女子は「食べる専門だから」と自称するほど。日常のイベントにも全力で臨むことが、何とも僕たちらしかった。


数日後の11月3日は、僕の記念すべき20歳の誕生日。おめでたい日だが、学校生活は通常通りで1限から6限というフル稼働。そんな中、夕方の授業時、ふとドアの隙間を覗くと、YMとHMが廊下から手招きをしていた。口パクとジェスチャーで授業中と伝えたが、講師の先生が行っても良いと許可を下さったので廊下に出ると、2人は誕生日プレゼントを用意してくれていた。ボールペンとクリアファイルというチョイスは、日常的に使えるもののほうが良いだろうという配慮で、とても嬉しかった。

翌日。僕は、フリーペーパーの制作会社に行き、人手を募集していることを報告したうえで、経験値を積むためにアルバイトをすることを決めたことを講師の先生に報告。また、同じ日には全国の系列学校で合同開催された小説・シナリオ公募の結果が発表され、僕が応募したシナリオ作品は優秀賞を受賞。1日遅れのステキな誕生日プレゼントになった。

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