第44話

自主ドラマの制作は進み、ついに撮影開始、俗にいうクランクインとなった。慣れないカメラ機材のセッティングをする中、NM直属のCG・映像専攻の学生はスムーズに準備をしていた。改めて、それぞれが専門性に特化した授業を受けているのだと実感。そこへ、思いがけずキャスティングされたMと、高校卒業以来の再会を果たした。

高校の時に、いつか脚本担当作品に出演してみたいと言ってくれたM。卒業から約1年半で念願が叶うとは思いがけないことだった。

何とか撮影を終えてしばらくしてから、僕は家で肉じゃがを作っていた。決して家で食べるわけではなく、インターンで東京に滞在中のHMに届けるためである。袋に肉じゃがを詰めて、マジックペンで袋にメッセージを書き、それを冷凍便で郵送。後日、「美味しかった、おふくろの味がした」と感想LINEをもらった。


オープンキャンパスの学生スタッフを始めてから約1年。高校生相手に行う校舎見学や学校説明も、普段受けていないはずの授業内容や教室の解説ができるようになった。他専攻の友人と幅広く交流してきたことで、何気ない会話から得た情報を説明に取り入れることができた。また、高校生対象のキャンプをきっかけに、学生スタッフをしていた姉妹校との学生との交流が増えたのもこの頃から。

夏休みの間も学生スタッフのシフトに何度も入ったことで、あっという間に夏休みも終わり9月に入った。文芸誌と雑誌編集の授業の時、僕は講師の先生から編集部として携わっていた歴史雑誌の編集長になることを打診された。また、そこで1枚のフリーペーパーを渡され、バックナンバーを取りに編集部を訪ねてほしいとお遣いを頼まれた。

HMが東京からインターンから戻ってから数日後、僕はそのフリーペーパーの編集部を訪ねた。この会社の社長との出会いが、後に僕のキャリアに大きな影響を与えることになるなど、まだ知る由もなかった。

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