第43話
様々な準備に追われる中で、ようやく学園祭当日を迎えた。昨年以上にお化けメイクにこだわりをもったことで、お化け屋敷としてのクオリティも上がり、来場者を脅かすことができた。副リーダー兼会計担当として、2日目の夜には会計処理をしていたが黒字として利益を出すこともでき、大成功を収めた。来年はおそらく就活に追われ、学園祭の運営側として携わるのは、今年が最後になるかもしれないと思っていた。
それから数日後、HMはインターンのために東京へ向かったため、賑わいのあった校舎4階の廊下は、少し寂しくなったような気がしていた。お化け屋敷の打ち上げも終わり、また僕らにはいつものように、何かを制作する毎日に追われ始めた。
NMと進めている自主ドラマ企画も、何とか脚本も9割方完成した。タイトルロゴも周囲の友人たちに意見を聞きながら決まり、文芸誌や雑誌編集のスキルを活かす形で、僕が台本の製本作業もすることになった。だが、制作現場には何故かトラブルやハプニングがつきもので、決まっていた4人の役者のうち、ヒロインの友人役の女優さんが、事務所のスケジュールの兼ね合いから出演が厳しくなってしまったと言う。代役を見つけるため、キャスト陣の伝手を頼ることになった。
夏休みを控え、今年も高校生を対象にした1泊2日のキャンプが行われることになり、入学事務局からの依頼で、今回も僕は学生スタッフとして参加させていただくことになった。姉妹校である動物科やカフェ調理科の学生たちと、賑やかに自己紹介をし、キャンプを迎えるのが楽しみになったほどだ。
それと同じくして、自主ドラマで決まっていなかった女優さんの代役が決まったと、僕はNMから報告を受けた。女優さんのプロフィールデータを見せてもらった僕は、思わず驚愕した。それは、高校時代、僕が生徒会選挙に出馬したときに推薦演説をしてくれたMだったのだ。世間の狭さを実感した瞬間だった。
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