第42話

新入生歓迎会や自主ドラマ、学園祭のお化け屋敷企画など、様々な準備に追われていた3~4月だったが、そんなバタバタで僕は大事なことを忘れてしまっていた。それは、高校2年生の途中で退学をして通信制高校に編入したKが、この3月に無事に卒業をしたことだった。

当時仲の良かったクラスメイトたちに連絡を取り、何とか予定を合わせて、少し遅れたKの卒業祝いのために高校卒業以来久方ぶりに顔を合わせることになった。

大学や就職と、それぞれの進路を歩み、すっかり雁首を揃えることもなくなってしまったが、改めてこうして集まると、やはりバタバタで振り回された友人たちとの時間は、貴重な青春の1ページだったのだと実感する。数年に一度でも良いから、このメンツでまた集まりたいと僕は思った。


それからしばらくして、自主ドラマの脚本執筆に頭を悩ませていた時、高校時代3年間同じクラスで、散々授業用ノートを貸したり時間割を毎日メールで教えていたTから突然LINEが来た。現在神奈川の海上自衛隊で活躍中のTは、ゴールデンウイークに帰省してくるので学校に遊びに行こうと誘ってくれたのだ。

Tがアポを取ってくれて、連休中に僕たちは高校を訪れ、今は進路主任となった担任の先生のもとへ伺った。当時の思い出話に花を咲かせ、高校時代の楽しくも大変でてんやわんやだった3年間の生活が脳裏に浮かんだ。話を終えた後、Tと共に3年2組の教室を眺めた。面白くもあり大変なこともあったが、この教室で過ごした日常を決して忘れることはないだろうと改めて実感した。

高校時代の友人たちとの時間の余韻に浸る間もなく、僕はNMと共に自主ドラマ制作の真っ最中。そんな中、映像専攻で親交のあったHMが、インターンのために学園祭が終わってすぐから3ヶ月間東京へ行くことを知らされる。進路のために、それぞれが動き出しているのだと僕は周囲の友人たちの姿を見て実感していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る