第39話

卒業進級制作展を直前に控え、準備も大詰めとなった。文芸誌も歴史雑誌も何とか印刷会社への入稿が完了。モノが届くのを待つだけとなっていたが、この頃僕は実行委員会の副委員長兼務であったため、そちらの準備にも追われていた。

展示用のパネルの切断作業は、なかなか終わらず、また印刷後にミスが発覚して再印刷をかけたうえで、もう一度切断するということもあり、イベント直前になってもバタバタの毎日だった。

イベント4日前に、印刷にかけた文芸誌や雑誌が届いた。僕は、文芸誌を他専攻の友人に一冊プレゼントしたのだが、目次の『白寿の万年筆』というタイトルを見ただけで、僕の書いた作品だということが分かったらしい。周囲の友人たちも一発で当て、それが僕の世界観であると言ってくれた。自分にしか描けない世界観の中で、作品を書いていこうと決めた。


展示作品を完成させるために、どの専攻もギリギリまで作業に追われていたが、2日間に渡るイベントは、何とか終えることができた。実行委員会でやる作業量は尋常じゃないぐらい多く、それぞれに大変な思いもしたが、何とかイベントが終わったことにホッとしていた。しかし、イベントが終わった翌日、僕は実行委員長を務めていた先輩から、『実行委員会の副委員長として、何の役にも立っていなかった』という苦言の長文LINEが送られてきた。この事で、僕はひどく憔悴してしまった。ただでさえワンマンな先輩だっただけに、最初の頃は仲が良かったはずの先輩との関係性は、ものの見事に崩壊した。

先輩と上手くいかなかったのは、僕だけではなく、NMも同様。卒業進級制作展が終わると同時に学校にも来なくなってしまい、僕が送ったLINEにも返信はおろか、既読すらつかなくなっていた。この頃から、学校内の環境に大きな変化が起きていたのは確かなことだった。今の心の内をどうしても打ち明けたいと、僕はUYにSOSのLINEを送っていた。

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