第35話

高校時代、同じコンピュータ部で検定勉強を共にした食事会が行われたのは、お盆明けのことだった。僕が副部長をしていたときに、部長だったI、同じく部員だったMとHという4人が、約半年ぶりに顔を合わせた。

地元の居酒屋に集まって、お茶で乾杯をして近況報告をした。部活の時には毎日のように集まり、検定勉強に勤しんでいた4人は、デザイン科の専門学校、歯科衛生士専門学校、看護学校、大阪の大学と、それぞれの進路を歩んでいた。知り合いがいない中で、4人は新しい環境に馴染み、何とか今の学校生活を楽しんでいる。また定期的に集まろうと約束をした。


4人の集まりの余韻に浸りながら、相変わらず夏休みになっても、よく見る顔ぶれの同級生たちは学校に来ていた。僕も、コンクール応募に向けての原稿を書くために、パソコンのある教室にこもっていた。そんな時、映像専攻の同級生であるYMからデッサンルームに来てほしいとLINEが来た。デッサンルームに入ると、広い教室にポツンと一人、YMがイーゼルを立てて、自分の手のデッサンをしていた。聞くところによると、毎年デッサンを受ける1年生は、100枚の手のデッサンがあるそうだ。普段文字しか書いていない自分は、ふとそんな課題がなくて良かったと思った。

YMは、デッサンルームで一人いるのは寂しいから一緒に自習をしようと誘ってきてくれたのだ。パソコンばかりで原稿を書いていた僕は、そのまま近くの文房具屋に行って原稿用紙を買ってきた。かたや手のデッサン、かたや手書きでシナリオを書く時間が、しばらく続いていた。

気が付けば夕方になり、夏休みの学校クローズ時間である17時になっていた。お互いに程よく課題が進んで、良い時間になったと思った。その夜、家路に向かう車の中で、YMから初めて電話がかかってきた。何事かと思うと、秋休みにバーベキューをやろうというお誘いだった。僕はますますアウトドアになっていた。

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