地球沸騰化

山谷麻也

無関心のツケはここまで

 ◆麦蒔き日和


 私は1951年11月、四国は徳島県の山間部で生まれた。

 気象庁の記録によると、私が産声を上げた日、県内の最高気温は22.6℃、最低気温は10.1℃だった。ほぼ快晴だったようだ。母が実家の麦蒔きの手伝いに行っていて、産気づいた、とよく聞かされた。

 同年8月の最高気温は34.4℃、最低気温は21.6℃だった。


 ◆驚きの36℃台


 小学校の庭に百葉箱があったように、記憶している。

 気温など気にすることなく、子供時代を過ごした。都会の高校に入り、クラスの優等生が夏休みの登校日だったか

「暑いはずだよ。家の二階の温度が36℃台だった。人間の体温と同じだもん」

 と驚いていた。


 私にはピンと来なかった。この年(1967年)8月の県内の最高気温は35.2℃となっている。今から考えると、民家の二階なら36℃台というのは十分あり得た。 


 徳島県で記録した8月の最高気温は2013年の38.2℃だった。実感としては今年、確実に更新しそうである。


 ◆秘境にも熱波


 10年前に埼玉県からUターンした。奥地の秘境・祖谷に往診して、夏の涼しさに驚いた。冬はけっこう雪が降る。空き家が多く、賃料も安いので「別荘代わりに借りようか」とも考えたことがあった。


 その頃でも、祖谷では

「エアコンを使うのはひと夏に一日か二日」

 と言われたものだった。


 さすがに最近、祖谷から通院している患者さんは

「祖谷も暑い。クーラー入れんと過ごせん」

 と、参っているもようだ。


 ◆暑さ知らずも


 ローカルな話に終始しすぎた。

 地球レベルで見ると、南極・北極の氷さえ急速に解けている。この惑星には人間が安住できる場所などなくなってきた。


 2019年、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさん(当時16歳)は国連気候行動サミットでスピーチし、環境問題への自覚を訴えた。

 彼女が雑誌『TIME』の「今年の人」に選ばれた際、当時のトランプ米大統領は

「アンガー・マネジメント(怒りのコントロール)をしてから、友人と懐かしの映画でも見に行くべきだ」

 と皮肉った。

 若気の至りで、怒りに任せて行動している、とでも思ったのだろう。トランプ氏をはじめとして、ツラの皮が厚い人種は、暑さを感じないのだろうか。


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