第8話 メナの手下達
少年以外に生存者は見つからなかったが、先行してラグモ市に向かった一団はドラゴンの追撃を受けなかったのが不幸中の幸いと言うべきか。
少年を護衛部隊に託して見送ると、ソマーとベレスはメナに先導されて森に入った。
「今も仲間が?」
「私が帰って来るまで、そこで待たせてあるの」
その場所は滝が流れていた。
メナが滝の裏側に案内すると、その先の洞穴で4人の男女が焚火を囲んで談笑していた。
「頭!」
1人がメナに気付き、4人が立ち上がる。
「マレナとテクサは?」
「狩りです。肉を切らしたもんで」
「ソマーと一緒にいるのは?」
「ベレス。王国軍の司令官よ」
その時、滝のカーテンを破って1人の男が憔悴しきった様子で現れた。
左腕が無くなっており、右手で傷口を抑えているが流血し続けている。
「テクサ!マレナは!?」
メナの問いに、
「ドラゴンに食われた!早く逃げ…」
手下の1人が手当てに駆け寄ろうとしたその時、ドラゴンの頭が滝を破ってテクサを捕らえ、また引っ込んだ。
その手下は驚いて尻餅を突く。
「こんな所まで…!」
ベレスがそう言いながら剣を抜く。
ソマーを先頭に一行は外に出たが、ドラゴンはいなかった。
「どこだ!」
ベレスが怒鳴るが、周囲に気配は無い。
と、ソマーは頭上の空間が揺れ動いた気がした。
見上げると、滝の頂上の空間が湾曲しており、それは体を透明にして背景に溶け込みこちらを見下ろすドラゴンだった。
ドラゴンは透明モードを解除すると、口を開いた。
「飛び込め!」
ソマーはメナの腕を掴んで滝壺に飛び込んだ。
水面がドラゴンの火炎放射でオレンジ色に染まる。
ベレスと他2人も水中にいたが、あとの2人は見えない。
と、ソマーとメナの眼前に、黒焦げで目を見開いた男の死体が沈んできた。
火達磨になっても必死に滝壺を目指したが力尽きたのだろう。
メナが滝壺の奥を指差すと、ぽっかり口を開けた水中洞窟があった。
ソマー達はそこに向かって一心不乱に泳いだ。
メナの部下2人も続こうとしたが、1人は水中に顔を突っ込んだドラゴンに足を捕らえられ引っ張り上げられてしまった。
最後の女性の手下は、ドラゴンの口を辛くも逃れた。
水中洞窟は入ってすぐに陸地付きのエアポケットがあった。
「ロマ、灯りを」
女性の手下が、置いてあった木箱から魔導ランプを取り出して点灯すると、細い通路の洞窟が現れる。
「秘密の脱出路よ。先導して」
「はい、頭」
ロマを先頭に、一行は秘密の脱出路に入って行った。
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます