第6話 東の湖畔の戦い
ヴィスキの体が痙攣しながら首から鮮血を噴き出す様に一行が固まり、ドラゴンが船を突き上げるのに十分な隙だった。
「おわ!?」
「う!?」
船は宙に浮きながら転覆して湖面に叩きつけられ、一行は水中に投げ出された。
ドラゴンは水中でもがく一行の周りを悠々と一周すると、ローヴが脱げず悪戦苦闘するズッキを狙った。
ズッキは咄嗟に結界で自分を囲い、ドラゴンの両顎は阻まれ、まるでガラスの球にかじりついたかのようになった。
だが数秒後、結界にヒビが入り、ズッキが目を見開いた瞬間、両顎が完全に閉じられた。
それを見たナイフ士は夢中で手足を掻いて水面を目指したが、ドラゴンに水ごと引き寄せられ吸い込まれてしまった。
ルーはその間に転覆船をよじ登ると、船底を蹴って岸に跳躍した。
「反則だろおい!」
背中の大剣を抜くと、ドラゴンが浮上して空中に上昇し、ルーに向かって来た。
「でもこれで、報酬は全部俺のもんか。ヘヘヘ」
大剣を握る手に力を込めると、刃がオーラを纏う。
ルーは大剣を右上段に構えるとドラゴンに向かって跳躍し、転覆船に向かって降下しだすタイミングで、すれ違いざまに顔面に大剣を叩き付けた。
「てい!」
が、大剣は根本から弾け折れ、刃は虚しく落下していった。
「何!?」
動揺して刃の無い持ち手を見ている間にドラゴンが下に回り込む。
気付いた時には、ルーはドラゴンの口の中にダイビングする格好で姿を消した。
報告を終えたベレスは項垂れた。
「…王様。面目次第もございませぬ」
ンブラは途中で彼を王国軍に託し、部下達とオーク領に戻ったのでここにはいない。
「いや、生きていて何よりだった。ここは勇者達に任せよう」
「…御意…」
「ンブラ殿には、直接感謝と謝罪を伝えねば」
そこへ衛兵と一緒にあの船頭が現れた。
衛兵は途中で船頭を待たせると、進み出て王に敬礼し、
「あの男がルー達についてご報告があると」
「ん?通せ」
衛兵に促されて船頭も進み出た。
「東の湖畔で船頭をしているソマーです。ルーとの船賃交渉で王に雇われたと聞きました」
「うむ。彼らはどうした?」
「全員ドラゴンにやられました。全滅です」
「…まだ日も落ちてないぞ」
「宰相殿。私は見ました。彼らを乗せた私の船は引っ繰り返され、私は船に隠れて一人生き残ったのです」
「まさか…あり得ぬ!」
大臣の1人が叫んだが、沈痛な空気が支配する。
それを破ったのは…
「私にやらせて下さい」
全員の視線がソマーに集まった。
続く
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