第7話:肉片をアイテム扱いはやめてください!

 そんなこんなでようやく話せるようになったはいいが、異世界転生ってそういうもんだっけ? なんでゼロスタートどころか身体の大半がない状態からのマイナススタートなの? むしろ異世界転生ってのは色々チートなオプションがくっついてのプラススタートが醍醐味やろがい!


「……こことは違う世界から来たって、そんなおとぎ話みたいなこと本当にあり得るのかしら」


「オレにも信じられん、こんなん中身のない量産型WEB小説だけの話だと思ってた」


「???」


 オレの話を聞いてキョトンと首を傾げるリゼッタたんを見るに、おそらくWEB小説のようにほいほい異世界転生なんてできないのだろう。いや、当たり前にそれはそうなんだけどね、昨今の異世界転生系アニメの異様なまでのテンプレアニメの乱立を見てしまうと、もうね、異世界なんて簡単に転生できちゃうんではないかと錯覚してもおかしくはないのではなかろうか。


 とにかく、ここではなろうテンプレについての議論なんて死ぬほどどーでもいい。WEB小説の在り方を憂うよりまずは、オレのこの絶望的な状況をなんとかしなければいけないのだ。やりたいやつはやればいい。ここは本格ファンタジーなのでね、なんでもありですよ!(暴論)


「それよりも、オレの身体がレアアイテムになってることの方が意味わからん。どゆこと?」


 ただの一般的な社会人男性のバラバラに爆発四散した身体のパーツをありがたがる特殊な嗜好をお持ちの異世界に転生したのは、はたして幸か不幸か。こんなことになるならもっと身体を鍛えておけばよかった。どんなオシャレよりも筋肉が全てを解決する。


「超至宝級最高レアアイテム、【不死の肉塊】っていうのは、もうずっと昔から……」


「ちょっと待てぃ!!」


「キャッ、急に何ですか? 話を遮るのはやめてもらえます?」


「いや、待て待て、オレがここに転生してきたのはついさっきだぞ、ずっと昔ってどれくらい昔の話なんだ?」


「え、たぶん10000年前とかそれくらいじゃないかしら」


「え、えぇ~……、雑に壮大すぎない?」


「知らないわよ。話を続けてもいい?」


「う、うん」


 全然釈然とはしないが、ひとまず大人しく話を聞こうじゃあないか。それにしても、なんだ、どういうことだ? オレが転生してきた時間と、この世界の時間が盛大にズレている。つまり、どういうことだってばよ。


「で、【不死の肉塊】っていうアイテムは、【絶対干渉無効】の呪い、いえ、アナタに意思があるならスキルかしら、まあいどっちでもいいわ、そのスキルによって、ありとあらゆる物理的、魔法的な接触や影響を拒絶することができるの」


「つまり、最強の防御障壁となるのか」


「そうよ、盾に使えばどんな攻撃も弾く最強の盾に、村の塀に使えばいかなる魔物の侵入も拒む防壁に、城塞なら敵はどんな手を使っても攻略することもできないでしょうね」


「しゅ、しゅごい」


 自身のことながら、我が身体のパーツがありとあらゆる場所でしっかり活用されていることに驚きを禁じ得ない。けど、オレのナニが付いた最強の盾とかなんかヤダ。大したモンじゃないんで、そこだけはガチでずっと見つからないでいてほしい。


 あ、だから、バラバラになった肉片からは血も流れないし、痛くもないし、腐らないし、そもそも死ぬことすらないし、だから、リゼッタたんの死霊術も効かなかったのか。


 もしかして、この【絶対干渉無効】のスキルのせいでこんな無惨な姿で転生しちゃった、とかない? これ、メリットに対してデメリットがすごすぎない? なんでWEB小説の設定でこんな凄まじいデメリット付けちゃったの? もっとこう、爽快感をだな。


「もちろん、【不死の肉塊】が見つかることはほとんどないわ。アナタの話を聞いて合点がいったけど、それもそうよね、だって一人の身体のバラバラになったパーツなんだもん、数は限られているのだから」


「それで、超レアアイテムなのか」


「【不死の肉塊】が一欠片あれば国が作れるほどの価値があるのよ、アナタの身体」


 と言われましても、自分の価値について実感は全くない。自分の身体だしね。自分の身体、プライスレス。


 そんなことよりも。


「まずは動けるようになりたい」


 オレは今歯茎を手に入れて、ただの肉塊から、喋る肉塊になっただけにすぎない。そんなんほぼ誤差だからね。アンデッドになりました、よりもひどいからね。オレなんてアイテムですからね。


「リゼッタたんにお世話になるのも心苦しい」


「ねえ、さっきからそのリゼッタたんっていうのやめない? ……な、なんか恥ずかしいわ」


「よし、絶対にやめない!」


「にゃんで!?」

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