第5話:何もわからん、何もわからん。
ぽ、ぽえぽえ~? レアアイテム? オレが?
いや、待て待て、え、何? 聖者の遺体的な存在? 何もスタンド能力とかあげれませんけど!? そして、オレはまだ生きてるんだ、遺体じゃないッ、た、たぶん! あと、なんかネーミングセンスが弱そう! 【不死の肉塊】って全然レアアイテムっぽくない! イヤッ、イヤ、イヤ!!!
全く意味がわからない展開に、現実逃避でなんかちいさくてかわいいやつになろうとして、なんかただのグロい頭部だけのやつだったことに絶望する。あはっ、あはっ、こんなになっちゃった……たはは。なっちゃったからにはもう……ネ……
「ふふ、ふふっひ、こ、これさえあれば、わたしも……」
そして、絶賛混乱状態のオレの傍らでは、リゼッタたんが何やらよからぬことを企んでいる悪い表情をしてらっしゃる。リ、リゼッタたん、悪い娘! いけませんわ、可愛らしい幼女がそんな表情をしてはいけませんわ! あと、笑い声のクセが強い。
「わたしの死霊術が弾かれたのは、【不死の肉塊】の【絶対干渉無効】のせいね」
く、リゼッタたんに物扱いされている、く、悔しい、こんな幼女にオレは負けるのか。うッ、耐えろ、ここで気持ちよくなっては何かマズい気がするぞ! 耐えるんだ、オレの理性! ……ふぅ。
「あら、何か言いたいことがあるみたいね、そんなにビクビク痙攣しちゃってどうかしたのかしら?」
今、ここの主導権は完全にリゼッタたんが握っている、というか、オレの命運とかそういうのも全部握られている。その証拠に、転がったままのオレの頭部をリゼッタたんが立たせてくれなかったら、オレは彼女が持ってきてくれた本すら覗き込めなかったのだから。というか、リゼッタたんのその口調は無自覚なの?
ま、本のページにはインクが滲んだ全く読めない文字ばかりが並んでいて、何が描いてあるかなんてさっぱりわからなかったけどね。オレの貧弱な身体のパーツが詳細に図表されていたらそれはそれでイヤだったから、まあ、良しとしよう(?)
「それにしても、アナタにもちゃんと意思があるとするなら意思疎通ができないと何かと不便ね」
それはオレも感じているところだ、早いうちに上下関係というのをリゼッタたんにわからせてあげないとダメだからな。幼女は年上のお兄さんには敬意を払わなくちゃいけんないんだよ。
「下の歯の一本でもあれば、わたしの魔法と合わせて話せるようになるかもしれないわね」
いや、リゼッタたんはオレを助けようとしてくれている。……はずだ。それならば、メ〇ガキをわからせてあげようという考えはあまりにも非人道的なのではなかろうか。ロリコンの波動に目覚めていないはずのオレにも良心はかろうじて残っている。
「バラバラになっていても自分の身体の一部よ。近くにあれば感じ取れるんじゃないの? ほら、早くやってみなさいよ」
この幼女、あとでぜってーわからせる。幼女からの冷ややかな眼差しにぞくりとしつつ、ひとまずはリゼッタたんの言う通りにしてみる。
とにかくあるだけの感覚を研ぎ澄ませて、オレの身体の感覚を探ってみる。よくわからんが、赤黒い傷口から剥き出している無数の神経を地面に這わせていくイメージだ。想像したらめっちゃグロいな。もちろん全編モザイクばっかりだ。
しかし、さすがにそんなに簡単に見つかるはずがなかった。なにせ、感覚としてはあの深い森の中に落っことしたガンプラのクリアパーツの一部を目隠しで探しているようなもんだ。大抵のモデラーは諦めるだろうし、オレの集中が続くくらいの距離になければただの徒労だ。
そもそもだ、たとえば、伸びた爪を切っても痛くもかゆくもないし、それがどうなろうと何も感じないし、それをもはや自分の身体の一部だとも認識しないでゴミに捨ててしまうだろう。
ということは、バラバラになった身体がたとえオレの一部でまだ死んでない状態だったとしても、それが受ける刺激をオレが感じることなどはたしてできるのだろうか。考えるまでもなく、できやしない。だから、たとえリゼッタたんに罵倒されたとしてもできないもんはできないんじゃないのかなあ。
まあ、こんなバラバラの状態になった人間ならどうだ、という議論は完全に不毛だ。そんなんオレにも何もわからんからな。
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