異世界肉片転生 ~異世界転生したオレ、まさかのバラバラ死体のままだし、肉片が絶対防御の素材になっていたので、ネクロマンサーの幼女と共に自分の身体を取り戻しにいきます~
第4話:……【不死の肉塊】? 急に流れ変わった?
第4話:……【不死の肉塊】? 急に流れ変わった?
彼女は幼女らしくない古びた大きなローブを着ていて、それをずるずると引きずりながら、慣れた足取りで暗い森の中を歩いていた。オレの視線はオレの頭部を抱えた幼女の胸元に固定されていて、幼女が森を歩く度にわずかに揺れる。
深い森の中を、グロい頭部を持って奥に進んでいく妖しげな幼女。
うーん、実にファンタジーな構図じゃあないか。唯一不満な点を挙げるとするならば、そんな幼女のミステリアスな可愛らしさを強調させる小道具に成り下がっている、このオレの存在だけだ。
やがて、幼女は小さな小屋の前で足を止めた。
深い森の奥、木々が密集し、日の光がほとんど届かない場所に、その小屋は隠れ潜むようにひっそりと佇んでいた。古びた木と石で造られた小屋は、苔や蔦に覆われ、まるで自然の一部となっているかのようだった。それだけならきっと、おとぎ話にでも出てきそうな魔女の小屋にも見えるだろう。
だけど、この小屋の見た目はずいぶんとひどい有り様だった。
小屋の屋根は古い藁で覆われていて、手入れもされていないのか所々が朽ちかけているし、窓は小さくて古びて錆び付いた鉄の格子がはまっていた。その窓枠には幾つかの魔法の護符のような物や魔除けの道具のような物が来客を拒むように乱雑にぶら下がっている。
木製のドアは誰かが力いっぱい何度も叩いたのかひどくひび割れていて、真鍮製の取っ手はすっかりくすんで今にも壊れてしまいそうになっていたけど、なんとかギリギリでドアを頑丈に閉ざしていた。一体何があったらこんなにボロボロになるんだ?
一方、そんな悲惨な小屋の周囲には、おそらく彼女が育てているのであろう不思議な植物が咲き乱れていた。
この小さな庭だけは小屋とはうって変わってとても可愛らしくて、そして、丁寧に育てられていることがド素人のオレにもなんとなくわかった。そして、咲いている草花はどれもこれも見たことも聞いたこともないものしかなかった。黒いガラスのような花弁を持つ花や、薄暗い森の中で淡く光る草なんてのもあった。そう考えると、さっきの魔法のこともあるし、やっぱりここは異世界なのか。
「ちょっとここで待っていて」
幼女は部屋の中央にある古びた木製のテーブルの上に乱雑に置かれていた、魔法陣が描かれた古い巻物や使い込まれた魔法の杖、それに何かの動物の骨やその他もろもろをどんがらがしゃっんっと脇にどける。そして、無理やり空けたわずかなスペースにオレをぐしゃりと置いた。
幼女はガラクタと一緒に床に落ちていた杖を拾い上げると、何気なくそれを振るった。
その瞬間、壁のランタンに火が灯る。おお、なんか魔法っぽい!
明りが点いたことで部屋の中の様子がよくわかる。ぬるりと左眼球を動かしてみると、テーブルの様子とそれらの扱いからなんとなく予想はしていたが、小屋は驚くほど荒れ果てていた。この子にはお片づけをしなさいと叱ってくれる親とかいないのか? こんな幼女が一人で住んでいるとかあり得るのか?
「そうだ、わたしの名前を言ってなかったわね、わたしはリゼッタよ。リゼッタ・リリ・グレイブドーン」
この幼女は、リゼッタたんというのか。かわいいお名前じゃあないか。
リゼッタたんは壁に取り付けられた大きな本棚から分厚い本を何冊か選んではパラパラとめくり、そして、投げ捨てる。棚には様々な薬草やキモい生物の標本なんかも並んでいたけど、それも躊躇いなく床へと投げ捨てていた。おいおい、大丈夫か、それ。
自身の住居に対するいともたやすく行われるえげつない行為に思わず目を背けると、小さな暖炉が部屋の隅にあるのに気付く。が、蜘蛛の巣のようなものがところどころに引っかかっているところを見ると、普段はあまり使ってはいないみたいだ。そんな暖炉の上には干したハーブや、乾燥させた果物が吊るされている。
「あったわ! ねえ、あなたってもしかしてこれじゃない!?」
幼女が何かを見つけたらしく、勢いよくテーブルに突っ込んでくる。
ほとんどヘッドスライディングのような勢いのまま、どんっと分厚くて埃っぽい本を目の前に置かれた衝撃でごとりと倒れて、またオレの視界が変わる。そこには簡素なベッドが部屋の一角に置かれていて、ボロボロの毛布や枕には誰かが手作りしたと思われる古い刺繍が施されていた。きっとリゼッタたんのセンスじゃないな。
「あら、ごめんなさいね、大発見に思わず嬉しくなっちゃって!」
いいのよ、幼女がウキウキしてる姿からしか得られない養分で生きているおじたんもいるからね、仕方ないね。そんな興奮冷めやらぬリゼッタたんの可愛らしい姿を、窓から差し込むわずかな光が部屋の中の埃を浮かび上がらせながら際立たせていて、なんとも幻想的な雰囲気を醸し出している。
「超至宝級最高レアアイテム、【不死の肉塊】! しかも、今まで見つからなかった頭部!」
……ん? お前はなにを言ってるんだ?
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