江戸時代、武士という立場にありながら惹かれ合う小三郎さんと英之助さん。二人の恋物語。
武家の跡取りという重責を背負っているからこそ、自分の気持ちを素直に言葉にできなかったり、思わぬところですれ違ったりしてしまう。そんな二人の不器用な関係性がとても愛おしく、武士としての葛藤が描かれるたびに切なさを感じました。
時代小説としての深みがありつつも、するすると読めてしまうのは、文章が読みやすいだけではなく、下男の善兵衛さんや、恋敵の安川くんといった脇を固める登場人物たちがとても魅力的で、物語に血の通った温かみを与えてくれているからだと思います。彼らのおかげで物語の世界に、深く入り込むことができました。
二人が愛ゆえに刀を抜き合うシーンは、もう言葉が出ないくらいでした。ここは、とにかく一度読んでほしい……。
そして、最終話まで読み終えたら、ぜひタイトルの意味をじっくりと振り返ってみてください。さらに作品への愛しさが込み上げてくるはずです。