15話 旅立ち
闇市から帰ってきて1ヶ月程たち、僕は今ロッキー山脈の森林の中の浅い川に入り魚をとっている。
横には昨夜張ったテントと焚き火、そしてその上にフライパンをのせている。
川がゆっくりと流れ時間も遅く感じる。
ピチャピチャと音を立てながら川をゆうゆうと泳ぐ魚の群れから1匹鷲掴みにして捕まえる。
魚はじたばたと自身についてる水をはねとばしながらなんとか逃げ出そうと努力するがそらはむだなことだ。
魚の名前は分からないが、美味い種類だということは以前捕まえて食べたからわかる。
エラの横と尾の付け根にナイフで傷を入れ、血抜きをして、動かなくなり血もだいぶ抜いた後アツアツのフライパンに直接のせる。
焼き始めに塩とコショウをそれぞれかけ、この前山の中でとった香草を同じようにフライパンにいれる。
手の中から術式によりへらを出して、魚をひっくり返し表と同様裏にも塩 コショウをまぶす。
あたりは川の流れる音、鳥の鳴き声それとフライパンで魚が焼かれる音しか聞こえない。
現在時刻は6時15分
日付は9月8日、僕は1ヶ月前からサバイバル訓練を受けさせられている。
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テントやフライパンをザックにつめ、片手にさっきいれた紅茶が入ったコップをもち移動する。
はじまりは1か月前、カナダに帰ったあと僕はすぐに家から遠く離れたロッキー山脈のとある森林部に放り出され、地図とテントなどが入ったザックを渡された。
先生がいうには『CELL』を集めるためには世界中を回るのだからサバイバルの技術を持っていなければならない、そのための訓練で1人で1ヶ月間森林の中で暮らせと言われた。
クマなどの猛獣がでたらどうすればいいのかと思ったが、それも魔術師達と戦うための訓練らしかった。
どのようにして魔術を使えばいいのか、隙を見せない方法、そして隙をつき一気に命を奪う判断能力が鍛えられると先生は話していたが、もちろん僕は
そんなことできるわけないと文句をたれた。
しかし、この程度出来ないようなら争奪戦には勝ち残れないといわれ黙るしかなかった。
だが、それで少しでも勝ち残れる確率が上がるのならと今日までの1ヶ月間耐えに耐えて生き延びてきた。
実際過酷その間ので、最初はザックは重くて上手く歩けないわ、食料が手に入れられないわで本当に生き残り帰れるか不安でしょうがなかった。
だが、1番の恐怖はやはり猛獣だった運良く熊には出会わなかったが、中盤以降オオカミや小型のピューマに三度襲われたが、なんとか返り討ちにしてやった。
傷も多くおったが、『CELL』による治癒能力の向上のおかげか普通は跡が残りそうな傷も3日ほどすれば完全になくなっていて、そんな『CELL』の能力を見ると改めて全て集めようと決心が固まった。
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「ただいま帰りました。」
ようやく家に着き1ヶ月ぶりに先生と会う。
「よく帰ったな、アーリ。風呂を沸かしてあるゆっくり入りなさい。」
「はい、ありがとうございます。」
先生はリビングのテーブルに工具を広げて何か作っていた。
風呂にはいるのは久しぶりだった。水浴びなら何度もやっていたがお湯につかることはまずなかったし、いつも猛獣に警戒しながら過ごしていたのでそんな余裕はなかった。
1ヶ月間の疲れを全て水にとかし流すように風呂に入ると今までの疲れがどっとてできて、まるで水の中にどこまでも沈んでいくんじゃないかと思えるほど体が重くなったように感じる。
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その日は風呂から上がったあと、先生が用意してくれた食事をとり、すぐ就寝した。
山から戻ってきてすぐではあるが明日には出発しなくてはならないので、疲れをできるだけとる必要があった。
翌日、眠っている途中一切目を覚ますことなく午前6時過ぎに起きるて、1階に行くとリビングに先生はいなかったが代わりにテーブルには眼帯と左の部分にしかレンズがはいってないバイク用のゴーグルが置いてあり、そして自動車をおいているガレージから何か作業する音が聞こえていたので、ガレージに向かった。
「先生、何やってるんですか?」
ガレージで汗を垂らしながら黒の車体にところどころ金属光沢のある赤色の差し色が入っているバイクの整備をしてる先生に声をかけた。
「アーリか、起きたのか。見てわからないか?
バイクの整備をしているんだ。」
「いや、それはわかるんですけど、なんでバイクの整備をしてるのかを消えてるんですよ…。」
カチャカチャとバイクをいじっていた先生は急に整備をやめると様々な角度からじっとそのバイクを見つめる。
ひとしきり見るのを終えると僕の方に振りかえった。
「このバイクはイギリスのトライアンフというメーカーが去年発表した『スクランブラー400 X』という車種だ。2週間ほど前に購入して届いたばかりだ。お前は争奪戦にこれからでるが、さすがにアシがないと不便だろ。だから、これをお前に譲ろう。」
「ちょっと待ってください先生。僕は、バイクの免許どころかバイクにすら乗ったことないんですけど…」
「それは、分かっている。だから、これには特別な改造を施している。
魔術的な改造を施すことによってこのバイクはお前が魔力を加えるだけでより安定なフォームを取れるようになっている。故にバイクが運転中に横転することはほとんどないだろう。たぶんな…」
最後に多分ってつけないでほしい、ただでさえバイクは横転すると命に関わるというのに。
「次に、スピードだ。魔力を加えることによってマシンの限界を超えたスピードを出すことが出来る。しかし、スピードを上げればあげるほど、消費する魔力も指数関数的に増えていく、あげ過ぎには注意だな。3つ目に耐久性だ、特殊な塗装によって魔力の伝達のしやすさを高め『強化』の魔術を使うことによって、より耐久性が上がるようにしておいた。確か『強化』の魔術は教えていたな、今やって、このバイクの耐久性を強化してみろ。」
『強化』の魔術、魔力によって物質の特定の性質を高める魔術、例えば剣をより鋭く 鉄をより硬く、汎用性が高い魔術だ。
バイクの表面に右手を当てる。魔力を全身から右手に骨格 臓器 血管を通り右手に集め、さらにバイクへと流していく。
「強化を使っていますが…どうですか?」
そういうと先生は難しい顔をしながら、持っていたレンチでバイグの給油タンクを軽く叩く。
「及第点ってところか…だが、長く乗っていけば魔力を通すのも上手くなり、次第に運転にも慣れていくだろう。」
僕の技術が低いのかそれとも単に先生の求めるレベルが高いのかは分からないが、とりあえずはそれなりに強化はできていたらしい。
「では、私は朝食の用意をしている間に、アーリはリビングに用意してある服に着替えろ。朝食を食べて1時間したら出発だ。 」
ガレージにバイクを残したまま、僕たちはリビングに移動していく。
ガレージを出ていく時にふと後ろをむくと、バイクは窓から入ってきた光を反射し美しい夕日のような赤色の輝きをはなっていた。
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