13話 闇市4 『ルーム』
「出すって、何をですか?」
僕が笑顔でそう問い返すと、相手もその怖い顔をさらに怖く笑顔にする。
「何って、お前がとった素材のことだよ。
棚から転がった黒い玉2つをお前がそのローブの裾に入れている所を…俺は見たぜ。」
左腕をより強く握られる。
「言いがかり付けないでください、僕はそんなもの知りませんよ。せっかく親切心で景品を拾うのを手伝ったのに…こんなのってあんまりです…よッッ!」
左腕を振り払い男の手を外そうとするが不可能で、さらに強く腕を握りしめられる。
「言うじゃねぇか。よく見たらお前、顔は女みたいで綺麗じゃねぇか…。よし今からお前のローブの裾の中を調べる。もし、その素材が出てきたりしたら…てめぇを娼館に売りさばいてやる。」
そういわれ、口の中の溜まっている唾液をのみこむ。
「もし、出てこなかったら、どうする?」
「そうだな、ここに50万ルーブルある。それをくれてやるよ。」
「ギャンブルってことかな…どうぞ、調べてくださいよ。」
そういうと男は僕の垂れたローブの裾の中に手を入れる。
周りは息をのみ見守り、僕は額から汗がどんどんでてきていた。
男は下衆な笑みを浮かべて僕のローブの裾に手を入れてまさぐっていたが、途中から顔の笑みが抜けていき、今度は男の方が汗を大量にかき始める。
「そんな、バカなっ!」
「どうしたんです。あったんですか、それともなかったんですか。」
「おっ…お前、どこに……かっ、隠しやがったな。」
先程までの顔が嘘だったように男の顔は真っ青になっている。
「なかったんですよね。まぁ当たり前ですが。」
「くっ…ローブの胴体の方に隠したな、しらべさせろ。」
「どうぞ、ご自由に…」
その後、数分男は念入りに僕の体を調べたが、結局『CELL』は出てこなかった。
「どういうことだ?お前、まさか何か魔術を使ったなッ…」
そういうと男は僕の首を掴もうとしてきたが、それは叶わなかった。
男の手はディーラーによって止められた。
「もう、いいだろう。これ以上は客の目が…うろたえたところを見せるんじゃない。俺たちは舐められたら終わりだ。」
「でも兄貴、素材が知らぬ間に無くなったと上に知られたら…」
「そこは何とか俺が誤魔化すから今は抑えろ。」
男とディーラーが小声でそう話しているのが聞こえる。
「さっきの酔っ払いとかが盗んだんじゃないんですか?」
僕は2人に向かってそういうと、僕の腕を掴んでいた方の男が即座にさっきの酔っぱらいが逃げていった方向へ走って行く。
「そうだ、50万ルーブル…今、貰えますかね。」
残ったディーラーにそういうと彼はギョッとした目で僕を見る。
「それは、あいつの言葉のあやというもので、今日はお引取りを…」
「ダメです、払ってもらいます!(キッパリ)」
「いや、そうはいうものの…」
僕は後ろの今まで僕たちのやり取りを見ていた屋台の客を指さす。
「ここで、断れば信用を失いますよ。負けた時は金をきっかり持っていくのに、勝った時はねじ曲げて金を払わない。そんな店だと噂で広まれば…どうなるか?」
ディーラーがどもる。あと一息だ。
「50万ルーブルは大金ですが、この屋台だったらまだ取り返せますよ。払わなかった時の損失と比べればまだまだ…」
そして、最後に言う。
「そして、キッパリ言いましょう。勝者は…僕です!!」
……………………………………………………………
ホテルに帰ってきた。
ホテルに帰ると、受付をしてくれた女性が僕たちを部屋に案内した。
部屋はベットが2つと空調 冷蔵庫 CDプレイヤーがあり、なかなか広い部屋だった。
最もカナダの家の僕の部屋はベットが入るとほとんどスペースがないような部屋だから大抵の部屋は広く感じるのだが…。
女性が部屋を去り、僕と先生の2人だけになると、先生は僕を叱り付けた。
理由はもっともな事だが、あんな危険な賭けをしたことだった。
「まったく…」
「はい、すみませんでした…」
久しぶりに1時間ほど怒られた。普段、先生は滅多なことでは怒らないが今日は2回も怒らせてしまった。
「危険なことをしたのは叱るべきことだが…魔術の使い方は申し分なかったぞ。」
「ふふっ…はいっ。」
少しだけ笑いながら手から先程盗んだ『CELL』を出す。
「自分の手から物体の体積は関係なく物体を出し入れする能力、さっそく役に立ちましたよ。」
手に入れた『CELL』2つを左腕にのせると、この前と同じようにそれらが左腕にくい込んでいき、腕と同化していく。
「とりあえず、これで12個か…なかなか順調じゃないんですかね…」
……………………………………………………………
『CELL』保持者
アルカニオ…12個
?????…4個
?????…6個
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