9話 闇市0
僕は今ウラジオストクから出るどこに行くのかも分からないような地下鉄に、顔の前も見えなくなるほどすっぽりと黒色のローブを被っている。ローブのフードを少し上げて周りを見渡すと今の僕の姿と同じような人達が数人この車両の席に腰かけているのがわかる。
「フードを今すぐ深くかぶれ。」
隣の席に同様にローブを羽織座っていた男、すなわち先生がそういうと返事をするまもなく思いっきりフードを被せられた。
「痛いじゃないですか、先生。」
「できるだけ喋るな、周りを見渡すな。まだ到着まで時間はあるから少し眠って疲れを癒せ。」
鉄道はどんどん走っていく。1つ前の車両から車掌なのだろうか、紅色のローブを羽織った男?フードで隠れてて分からないが、おそらく男が乗客の乗車券を確認しているのが見える。
カナダからこの鉄道に乗るまでを思い出し終えると、先生の言っていた闇市について考える。
先生が言うには闇市とは、本来なら表社会では法的にも魔術協会の示している規律的にもそわないような取引が行われているらしいが、
そこでどのような『武器』を買うのかは全く想像できなかったが、聞こうとした時ちょうど人が車両にも入ってきてしまったので聞けなかった。
なぜ聞けなかったかと言うと、車両に人が入ってきたら極力、話すのも誰かを見るのもやめるように言われたからだ。
話すことも、視線を向けることも許されていないこの空間はやはり異質でこれから行く闇市というのもおそらくは危険な場所であることがひしひしと伝わってくる。
幸い一等車であることから人は少なく、それが救いであった。
この鉄道がウラジオストクを出発してからどれくらいたったかは分からない。
この鉄道には時計がなく先生も今持っていないので時間を計る術はないが、体感では3時間ほど経っただろうか。
先生は横の席で先程と同様に本を読んでいて、さっきフードを無理やり被せられてから何も喋っていない。
家から本など持ってこず、何もやることがない僕は先生の言うように到着まで眠ることにした。
幸いこの席はフカフカで眠りやすい。
つくまで…ゆっくり…と…眠れ……そう、だ…
……………………………………………………………
「起きろアーリ、もう着いたぞ。」
「はい…今、おき…ます。」
先生の声で起きると鉄道は既に止まっていて。この車両には僕たち以外誰もいなかった。
「行くぞ、アーリ。」
「ちょっ、待ってくださいよ先生。」
鉄道をおりるとそこはウラジオストクのプラットフォームのようにほとんど人はいなく静寂が辺りを支配していた。
「なんで、人が少ないんですか?」
「お前が寝すぎていたからだ。」
そういうと先生は改札に向かっていった。
改札には青いローブをきた、顔の見えない駅員が立っていて、先生は自身と僕の分のチケットをその人に見せて渡した。
渡されたチケットを慎重に確認すると、駅員の指先から青い炎が出て、そのチケットを燃やした。
この駅員は魔術師なのだろう。
「チケットの確認は致しました。お客様の身に何があろうと我々職員は責任をとりませんのであしからず。」
青いローブをきた駅員はそういうと僕たちに向かい 一例をして 改札を開けた。
改札の向こうにはまっすぐな通路があり、それは幅が20mほどありどこまで続いているのか分からなかった。
また、通路の左側の壁には扉がありそこには仮面を被ったタキシード姿の人達が1つの扉に1人ずつまるで人形のように立っていた。
先生は前から数えて13番目の左の扉の横にいる男に聞き取れないくらい小声で何か言うと、その男は扉を開き僕たちをその中に入れた。
扉の前はホテルのロビーの受付のようになっていた。
そこには先程の男と同じように仮面をつけタキシードに身を包んだ男女が何人かが座っていた。
「2人部屋を1部屋、宿泊日数は1泊2日チェックアウトは午前10時でお願いします。」
受付の女性一人に先生がそういうとその女性は何か書類を出した。
「お部屋は815号室となります。お食事は朝7時にお部屋に運ばさせていただきますが、よろしいでしょうか?」
「その内容で結構です。」
「では、お名前をここにお願いします。」
そういわれ先生は書類にサインをし代金を女性に渡した。
「確認致しました。お荷物は如何なされますか?」
「部屋に持っていってください。」
「承知致しました。それではお客様 くれぐれもお気をつけて。」
そういうとこの女性は僕たちの荷物を預かり受付の奥へ入っていった。
「アーリ、私たちは今からあの扉から外に出るがひとつ言っておくことがある。」
先生が指をさした方向を見るとこのロビーに入ってきた扉とは違う扉があった。
「私から絶対に離れるな、絶対だ。1m以上離れることがないようにな。」
僕の目を真剣に見つめながらそういった。
鉄道に乗っている時にも思ったがやはり闇市とはそれほど危険な場所なのだろう。
そう思うと今までにないほど体に緊張が走る。
それは感じたのか先生は再び扉の方を向き歩き出す。
僕は今から先生から離れないようにピタリと後ろにくっついて歩く。
「フードを絶対脱ぐなよ。…では行くぞ。」
こうして2人は闇市という世界に足を踏み入れるのだった。
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