仲直り

「すぅ……はぁー」

 いつのまにかオペレーター室は私の落ち着ける場所になっていた。


ピコン!


 どうせルカだろう。そう思ってスマホを手に取らなかったけどやっぱり気になって画面を見てみた。


『咲ちゃん、話聞くよ』


 勇人くんだった。どうしよう。本当に聞いてもらってもいいのかな。鬱陶しいって思われないかな。でも、ほんとに話聞く気ないとこんなメール送ってこないよね。


『ほんとにいいの?』


『うん』

 

 私はその一言に甘えて愚痴を聞いてもらった。嫌だったことはかなり引きずるタイプだから、話が長くなってしまった。


『つらかったろ。俺もルカと出会って少しの時、腹が立つし、はっきり言えないし、一人で気持ち抱え込んでつらかった。これからは抱え込まなくていいから、俺にでも話して』


 私は感謝をたくさん伝えたくて勇人くんに電話することにした。


『勇人くんありがとう。ほんとに、ほんとに元気出たよ! ありがとう』


『いーよ』


 いつもより勇人くんの声が優しい気がする。


『ありがとね。じゃあ、ばいばい』


『うん』


 口数は少ないけど、勇人くんの優しさがわかる。電話して良かった。

 

 電話が終わったあとすぐにルカから電話があった。


『ほんっとごめん。反応して欲しくていつまでもからかってたんだ。新しいメンバーができて嬉しくて、つい……』


『ふふっ! もういーよ。今度から気をつけてよね!』


 一生懸命説明するルカがおかしくって笑ってしまったけどルカは何も言わない。


『……じゃあ、ばいばいと言いたいところなんだけど、どうやって現実世界に戻ればいいの、これ』


『……うん。説明するね!』


ちょっと間があった。


『特にコツはなくて帰る意思と、腕を突き上げるとかの動きがあればいいだけだよ。裏世界に来る時も同じ。やってみて!』


『うん。やってみる!』


 電話を切って早速試してみることにした。

 帰る意思、帰る意思……

 そう思いながらそっと腕を突き上げてみると、優しい光に包まれた。


 いつもの学校に着くとなんだか現実感がない。よくわからないけどきょうのできごとがぼんやりしている。



ピコン!


『来週から咲ちゃん、オペレーターとして正式に戦うことになるよ! やったね!』


 家に着いてしばらくしてかなみさんからメールが来た。


ピコン!


 私はかなみさんが大好きなキャラクターのスタンプを送った。

 これで私もいよいよ本番を迎える。そして、約二ヶ月後には後衛としても戦うことになる。これは私のバカな夢だったけど、今では現実になり、不安を抱えている。


「よーし! 任務も訓練も頑張るぞー!」

 



 


 

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裏世界と現実世界を行ったり来たり 西村いさな @a-san1122335

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