今日は裏世界で勇人くんと2人きり
「なんか今日静かだね」
話すことが無さすぎて咄嗟に出た一言だったけど前来た時よりも、違和感を感じるほど静かだ。
「多分今日敵が少ないんだよ。だから人もいない。この世界の王の感情が割と安定しているんだろ。あとで説明する。まずはパソコンの設定するぞ」
どういうことだろう。この世界の王?
「ちょっと待って、とりあえず私、着替えてくるね」
「疲れてないか?ここ、結構広いだろ」
心配してくれた。嬉しい。でもいつものそっけなさを思い出し、ちょっと気持ちが落ち込んだ。
あれ、パソコンの設定しないのかな、さっきからずっと目があってるような。目が熱い。心臓の音がうるさい。
「あぁ、ごめん、実はすでに設定終わらせてたんだ。プライベートにも使えるように設定しておいた。スマホも。後、細かい設定もこの前の戦闘シュミレーションのデータから分析してやっておいた。……だから今からちょっと話がしたくて」
え、今なんて……。話? なんだろう。
「う、うん!」
話ってなんだろう。そんな深刻そうな感じでは無さそうだけど、あの棒読みからじゃわからない。
「裏世界の仕組み、ちょっと説明する。さっき王の感情にが安定して、敵が少ないって言ったよな。これ、感情が安定すると敵が減るし、その時の感情に関わらず、敵が減ると感情が安定する。その逆もあり得る。それと敵が増え続けて俺らがさばききれなくなると現実世界に被害が出る。こんな感じ。」
現実世界にも被害出るってこの前言ってたよね。そういう仕組みだったんだ。
「で、こっちが本命。別に深刻な話じゃないから安心して聞いてほしい。実はいつか……さ、咲ちゃんにも後衛として頑張ってほしくて」
「えぇ!?」
後衛?私入隊したばっかだし、ここの世界のこと何も知らないし、後衛ならルカがいるじゃん。
「後衛ならルカが……」
「ルカなら前衛もできる。やっぱり今後のことを考えると、咲ちゃんも戦う方にまわってほしくて。負担が大きいけど、簡単なオペレーターもやってもらうことになる。……どう」
どうって、私にはできない気しかしない。迷っていると沈黙が続いてしまった。
「オペレーターに慣れてからでいい。ちゃんと俺が教えてやる。」
棒読みの中から圧を感じて、
「はい」
と一言しか言えなかった。
勇人くんは私に圧を感じさせたのに、少しきょとんとした顔をしている。
「あ、ありがと。できるだけ早くオペレーターに慣れてほしいから、できたらでいいから毎日裏世界に来てほしい」
やっぱり今日の勇人くんからは少し圧と焦りを感じる。どうしたんだろう。
「なんか焦ってる?」
私は言うつもりがなかった言葉を口にしてしまった。こんなことを言ってしまったら、勇人くんは困るだけだろう。
「あ、バレた。」
!?私は予想外の言葉にびっくりすると同時にその悪戯な表情にどきっとする。
「さっき王の感情が安定してるって言ったろ?それ、実は大きな敵が襲ってくる前兆なんだ。多分三ヶ月くらいでピークに達する。だから咲ちゃんに前衛を任せたいんだ。かなみさんも前衛をしながらオペレーターをしてる時がある。スマホに連絡先入れといたから、いつでもいい、連絡してみて」
「う、うん、わかっ、た」
急な出来事に戸惑いを隠せない。
「大丈夫。俺らが全力でサポートする」
「うん……!」
今度は圧が感じられない棒読みだっし、優しさもちゃんと感じた。頑張ってみよう。まだオペレーターとしての実感も湧かないけど、きっとなんとかなる。
「俺からはもう大丈夫。解散しよっか」
「うん……!」
これって最高では?恋愛がしたいという夢も、不思議な世界で戦士になりたいという夢も叶い始めている。私の人生サイコーすぎる!
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