今日の学校は勇人くんと2人きり

「おはようございます!」

 

 元気よく挨拶したのに教室には誰もいない。

 え、学校休みだったかな。でもちゃんと確認したし大丈夫なはず。


「おはよ」

 

 うわ、びっくりしたー!後ろから勇人くんが来るなんて。


「あ、おはよ!」

 

 よかったー学校、休みじゃ無いみたい。


「今日、多分2人だけだね。もう始まる時間だし。」

 

嘘!うれしーあとで自習誘ってみよーっと。


「あら、今日は2人だけみたいだね!ぜひわからないところは先生に聞いてね!」

 

 吉岡先生やっぱり可愛い。でもまだ人見知りしちゃう。


「ねね、今日ルカは?」


「メンテナンス」


「メンテナンス?」


「武器の」


「へぇ、じゃああっちにいるってこと?」


「うん。」

 

 どうしよう、会話が続かん……


「咲ちゃんはさ、こっから自転車で帰るの?」

 

 話題振ってくれた!


「そうだよ!勇人くんは?」


「歩き」

 

 また途切れた。

 

 

 その後も頑張って話題を振ってみたけど、なかなか会話が弾まなかった。私、嫌われてるのかな。鬱陶しいって思われて無いかな。



 「では、この時間のコースはおしまいです! さようなら!」

 

 全く話さないまま終わりの時間が来てしまった。


「じゃあ、勇人くん、またね」


「……待って」


「え、何?」

 

 なんだろう、私なんかしたかな?もしかして、一緒に遊ぼうとかだったりして!いやいや……。


「明日、学校休みだろ? 一緒にスマホとパソコンの設定しよ」


「あ、うん、わかった……!」

 

 そっけない中にもどこか優しさを感じるような感じないような。でも明日も勇人くんと2人きり!ちゃんと話せたらいいな。


「咲さん。ちょっといい?このプリント、みんなに配っているんだけど…」

 

 吉岡先生だ?どうしたんだろう。


『夏休み! 児童クラブ高校生バイト募集!』


「人が足りてないみたいで、もしいいなって思ったらここに電話してみて。」


「はい、わかりました!」


 楽しそう。子供好きだし、やってみようかな。

勇人くん、バイトするのかな。誘ってみようかな。


『勇人くん! 私、このバイトしようと思うんだけど、一緒にやってみない?』

勇人くんにメールするの実は初めてなんだよね。ドキドキする。


『ごめん。俺、子供苦手なんだ』

 

 あー。なんかこんなメールを送った自分が恥ずかしくなってきた。明日勇人くんに会いたく無い。でも会いたい。でもそんなことを考えても仕方がない。さっさとお風呂に入って寝よう。



次の日、メールの着信音で目が覚めた。


『学校で待ってる。スーツは向こうで着ても着て来てもいい』


 うわ!絶対待たせてる!急がなきゃ!スーツを奪うように手に取り、私は自転車で家を飛び出した。


「お待たせ! ごめん! 全然メール気づかなくて!」


「いーよ。俺も既読つかないからゆっくり来たし」


 優しいのかちょっと怒ってるのか、よくわからない棒読みだ。


「……ん、行こ」

 その勇人くんの一言で、私たちは優しい光に包まれた。



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