登録完了!
コツッコツッコツッ……
勇人とルカのブーツの音が静かな廊下に響き、緊張感が増す。緊張と共にここが現実世界ではないという実感をゆっくりと感じ始め、癖である深呼吸をする。聞かれないようにそーっと。
「……すぅ。はぁーぅ……あはっ」
思ったより息が強くて変な声が出てしまい、笑い声が響いた。ルカも勇人も必死に笑いを堪えているが、ついにルカが吹き出してしまった。
「……っは!なんだよその声! おっかしー! な、勇人?」
「……ん、いや、全然……」
きゃあ!勇人くん優しいっ!いや、これが普段の勇人くんなんだよ、きっと。
一瞬で冷静になったけど、まだ勇人が自分のことをかばってくれたという希望を捨てきれていない。
「いつもならこういう時、一緒に笑うじゃん!ね、勇人?」
え、そうなの?
「……」
おや?勇人が少し照れているような…
「いやなんでもない……」
ルカは戸惑っている。私はきゅんきゅんしている。
「さっ、もうちょっとで事務所だよ!」
三分くらい歩いただろうか。いままでとは少し雰囲気が違う、現代を感じる部屋が現れた。なんか落ち着く。
「あら、勇人さんとルカさんと、……あ、咲さんでしたっけ?」
おっとりとしたお姉さんがこちらをを見つめてくる。めちゃくちゃ美人だ。
「ルナさんこんにちは!」
「…ちは…」
「こんにちは!」
ルナさんって言うんだ。
「早速咲ちゃんを僕らの隊に登録したいのですが。」
「おっけーだよ、ルカさん。じゃあ咲さんだけこっちに入ってね。」
「はいっ!」
「元気ねぇ」
ルナさんはニコニコしながらおっとりとした足取りで歩いていく。私もゆっくりと後をついていく。
「ここに手を当ててね。」
キラキラしたタブレットのようなものに手の形が映し出されている。そっと手を当ててみるとひんやりと冷たい。
「はい。おっけーだよ。オペレーターで間違い無いよね。」
「はい」
ちょっと緊張するなぁ。
「……これで登録はおしまいです!ようこそ、勇者隊へ!」
え何?登録もう終わり?っていうか勇者隊ってちょっとダサい……。ルカがつけたんだろうきっと。勇人くんがこんなダサい名前つけるはずがない!
「終わったよ!」
「おかえりー」
「……」
相変わらず勇人は無口だ。やっぱり普段からこんな感じなのかな。
「じゃ、これから僕らの部屋に行こうか。咲ちゃんのスペースも確保してるよ!」
いつの間に。
私たちの部屋は事務所からあまり離れていなかった。
「ここが咲ちゃんのスペースだよ。早速だけど隊服に着替えてね。とゆうことで僕らは退室しまーす。ドアと向こうにいるから終わったらでできてね。」
かっこいいスーツだ。
ぴったりに作られている。なんか怖い……。
体のラインがくっきりしたスーツだけど、綺麗に見える。
「ジャーン! どう?」
「お! 似合ってるじゃん!」
「……いいじゃん」
勇人くんが褒めてくれた!!!! サイコー!!!! 目そらされたけどサイコー!
「じゃちょっと休憩してからまた移動しようか!」
「はーい!」
るんるんで部屋に戻ると何か置いてあった。
スマホ?にしてはしっかりしているわりに軽い。せっかくだから勇人くんに聞いてみよーっと
「ゆーとくん!あれ、寝てる。」
ソファーで気持ちよさそうに寝てる。寝顔綺麗すぎない?うわー相当モテるだろうなー。って寝てるんだからそっとしなきゃ。
自分の部屋に戻ろうとすると、
「呼んだ?」
うわ、起きてただとっ?
「えーとこれ何かなーって。」
「あ、これスマホだと思ってくれてていーよ。この世界で使えるスマホ。」
「あ、そーなんだね。」
緊張して上手く喋れない!
「設定とか、俺できるから、わからないことあったら俺に言って。」
“俺に”を強調したように聞こえたような気がするけど、勘違いだよきっと!ふいに浮かんだ考えを振り払った。
「よーし! 今からオペレーター室にいくぞー! れっつごー!」
「ゴー!」
「……ごぉ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます