第24話 友達と幼馴染みとのお泊まり②

 心愛がお風呂から出てきて俺はその後に入った。いつもなら1番に入るので気にしないが今日は女子2人が先に入ってお湯に浸かっている可能性があるためシャワーで済ませた。


 お風呂を出ると自室へ行こうとしたが、美月と心愛がどうしてるか気になりリビングへ行くと何やら騒がしかった。


 何事かとリビングへ行くと美月と心愛とそしてなぜかお母さんがいて、カードゲームで遊んでいた。


(なぜお母さんまで……)


 俺が来たことに気付くとお母さんはこちらに来て肩をポンポンと叩いてきた。


「お風呂入ってくるわね」

「あぁ、うん」


 お母さんはお風呂へ入りに浴室へ行き、俺は美月と心愛のいるへと行く。


「奏翔くん、お帰り。恋ばなしよ?」

「あっ、ほんとにするんだ」

「お泊まりといえば恋ばなだからね」


 心愛はそう言って座ってと自分の空いている隣をポンポンと叩く。


 美月の隣も空いていたが、心愛が座ってほしそうにしていたので彼女の隣に座った。その時、美月がじとっーとした目をしていた気がしたが、気のせいだ。


 俺が座ると心愛はさっそく恋ばなを始め、口を開く。


「2人は好きな人か気になる人はいる?」


 心愛の質問に俺は美月が頭に浮かんだが、ここで口にしたら告白になってしまうような気がして黙り込む。


 一方美月は手を大きく挙げて、誰なのか聞いてほしそうな顔をしていた。それに気付いた心愛は美月の名前を呼んだ。


「美月ちゃん」

「私が好きな人は奏翔くん」


(えっ!?)


 さらっと告白され、俺が今ここで!?と心の中で突っ込んでいると美月は口を開いた。


「と、心愛と陽菜。後、奏翔くんの友達の横田くんも少し好き」


 告白をしたかと思いきや美月の好きが友達の好きということを知る。勘違いしたのは俺だけでなく心愛も告白だと思ったようで「あっ、そういうこと」と言いたげな表情をしていた。


 恋ばなだから友達として好きな人を言うのは違う気がしたが、まぁ、ゆるゆるでいいだろう。本気の恋ばなをしたとしても話すことが少ないのだから。


「奏翔くんは好きな人か気になる人はいる?」


 美月は気になるのかワクワクした様子で俺の答えを待つ。


「俺は、美月」

「…………わ、私?」


 あれ、美月が友達の好きを発表してるからじゃあ、俺も友達として1番好き美月の名前を挙げたんだが、美月は顔を真っ赤にし、心愛は口をパクパクさせていた。

 

 聞かずにはいられないと思った心愛は俺に確かめる。


「かっ、奏翔くん、今のはこっ、告白!?」

「えっ、いや、そんなつもりはなくて! 1番の友達って言ったら美月だなぁと思ったから美月の名前を出しただけで!」    


 慌てて告白じゃないと否定すると美月はしゅんとしょんぼりしていたが、顔をあげて俺に微笑みかけた。


「勘違い……けど、奏翔くんの1番の友達が私で嬉しい。私も奏翔くんが1番」

「! あ、ありがとう……」


 彼女にお礼を言うと目が合い、顔が赤くなっていくのを感じた。


 そんな中、心愛は手を頬に添えて幸せそうな顔をしていた。そんな彼女に美月は尋ねる。


「心愛はいるの?」

「私、は……いないかな?」

「……そっか。できたら教えてね」

「……うん」  


 無理に笑顔を作った心愛はゆっくりとこちらを見て、ふんわりと笑みを浮かべた。


 心愛は俺を好きでいてくれて本当なら返事をしなければならない。けれど、彼女は返事はいらないと言った。


 けど、俺はそれでいいのかとずっと思っている。返事がいらないと言って答えないのは……。


 頭の中でどれが正解なのか考えているとお風呂から上がったお母さんが美月を呼んだ。


「美月ちゃん、ちょっと来てもらえる?」

「はい」


 美月は立ち上がり浴室へと行くとリビングには俺と心愛の二人きりになる。


 シーンとした空気に包まれ、何か話題をと思っていると心愛は俺の手の甲に手のひらを重ねてきた。


 ゆっくりと隣を見ると彼女と目が合い、見つめ合う状態になってしまった。


「美月ちゃんには内緒にしてね。私の気持ちは奏翔くんにだけ知ってほしいものだから」

「……うん」


 コクりと頷くと心愛は手を離し、ふにふにと頬をつついてきた。


「奏翔くんが美月ちゃんのことを気になっているのはバレバレだから何か悩みごとがあったらいつでも言ってね」

「!」


(えっ、俺、心愛に言ったっけ……?)


 前に大智と話していることを聞かれていたのかもしれない。


「私は奏翔くんのこと好きだけど奏翔くんの恋を応援してるから。美月ちゃんとのことお手伝いするよ」


 これはもしかして幼馴染みは長い付き合いだから何でもお見通し、的なやつだろうか。


 もう隠すこともできないなと小さく笑うとお母さんは心愛のことも呼ぶ。


「心愛ちゃんも来てもらってもいい?」

「あっ、はい」


 心愛はソファから立ち上がると俺にニコッと微笑みかけ、お母さんと美月のところへ向かった。


(お母さんは2人を呼んで何をしてるんだか……)


 1人になってしまったので自室へ行き、ベッドへと仰向けになって寝転ぶ。ふぅと一息つくとスマホから着信音がして画面を見るとそこには「寺川杏」と書かれていた。


「こんな時間になんで……」


 取り敢えず通話ボタンを押し、耳へ近づけた。


『あっ、かなっち。もう寝るところだった?』


「まぁ、そろそろ寝ようかなと」


『それはごめんね。今度、揉ませてあげるから』


「…………何を、という質問はしないでおく。で、用件は?」


 さらっと流されたのが不満なのか杏は電話の向こうで「むぅ~」と言っているのが聞こえた。


『いや~そう言えば彼氏役してもらったお礼してないなぁって思ってさ』

「お礼なんていらないけど……大したことしてないし」


 あれは困っている杏を助けたいと思い自分から受けたお願いだ。お礼はなくていい。


『じゃあ、借り1ってことで何かあったら今度は私が助けるね』

「……わかった。何かあったら頼るよ」

『うんうん、オッケ。ところでさまた遊ぼうよ。この前、かなっちと遊ぶの楽しかったからさ』


 クラスでも明るい友達がたくさんいる杏。そんな彼女が俺と遊ぶことを楽しいと思ってくれたことは素直に嬉しかった。


『あっ、後、神楽ちゃんも誘ってほしい。この前ちょっとしか話してないからさ仲良くなってみたいんだよね』

「……わかった、美月に聞いてみるよ」

『ありがと!』


(これはもしかして俺が誘われた理由は美月との仲介役かな……)


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